インドネシアのマーケティングで使われるSES

インドネシアで消費者リサーチや広告を展開すると、必ず「ターゲットはSES Aだ」や「いや、BとCまで含むべきだろう」のような議論が始まります。

日本では聞きなれないこの言葉はSESと呼ばれ、インドネシアでは頻繁に使われる「消費者の切り分け方」の一つです。

今回は知っておくと便利なSESについてご紹介します。

インドネシアのマーケティングでよく使うSESって何?

SES(Social Economics Status /社会経済地位)は人口動態特性の一つで、生活者を切り分ける考え方の一つです。インドネシアでは消費者向けのマーケティングを考える際によく登場します。いろいろな呼ばれ方をされることがありSEC(Social Economic Class/社会経済階層)が使われることもあります。

SESは過去アメリカで長く使われてきました。戦後に所得格差が縮小した日本では使用されなくなりましたが、発展途上国の分析では現在でも有効な指標の一つとして頻繁に使用されます。そのため東南アジア各国ではいまだによく登場します。

もともとの考え方によれば教育レベルと職業によって消費者を切り分ける指標のようですが、インドネシアでは主に「家庭単位の家計支出や耐久消費財の有無」などで階層分けされるのが一般的です。

日本だとよく「年収」で消費者を最初に切り分けますが、インドネシアのマーケッターたちと話すと年収の話はほとんど登場しません。

日本の企業はよく調査などで参加者の世帯年収を聞きがちですが、インドネシア人側からは

  • 年収だけでは消費者として区分しても意味がない(収入より地位や支出を見るべき)
  • インドネシアでは収入を聞くのは失礼だ

などの反応をされます。

業界習慣的なものもあるのでしょうが、実際に収入に見合わない買い物をするインドネシア人も多く、「なるほどなぁ」と感じる部分もあります。

 

SESの区分

一般的なSESでは下記のように区分されます。

A Upper
B Upper
C1 Upper Middle
C2 Lower Middle
D Lower
E Lower

 

上記に加え、さらにA1とA2 に分けられたり、+がついたり、と細かく区分けされることもあります。

インドネシアにおけるSESの区分方法は世界的な調査会社であるニールセンがけん引しています。インドネシアニールセンでは支出に加え、調理用燃料や飲用水、電気代などを考慮しながらクラス分けをしています。

ただ、この区分けの幅はよく変わるので注意が必要です。よく変わる、というより消費者の実態に合わせて変えていかなければならないのです。

 

制度と実態に乖離はありつつも、インドネシアでは毎年最低賃金がすごい勢いで上昇しています。実際にすべての会社が順守しているわけではなさそうですが、それでも全体的に所得は増えていきます。

そうなると区分けのレンジも変わってきます。

例えば2000年あたりの引用データを見ると最低クラスEにおける支出は30万ルピア以下で、最高クラスAは150万ルピア以上。

引用:Slide Share

2010年ごろの資料ではEクラスは50万ルピア以下で、Aクラスは300万ルピア以上となっています。

 

万能ではないがSESは知っておくと便利

インドネシアの消費者構成は複雑で、正直なところSESだけで簡単に切り分けられるものではありません。

支出バランスに加えて、宗教、地域による性格の差など考えるべき指標は他にもたくさんあるからです。

 

ただ、SESの考え方を知っておくとやはり便利です

 

例えば日本観光誘致のイベントをショッピングモールで開催するとします。

日本人から見ると「ローカルモール」か「高級モール」の2択程度にしか見えません。

ところが地元のインドネシア人に言わせれば同じ高級モールでも「SES Aが多いモール」や「SES Cが多いモール」などもう一段階細かく切り分けられるようです。

一見派手な高級モールでイベントをやっているように見えても「あそこでイベントをやっても、参加者の購買力は低くて顧客になり得ない(日本旅行に行く層ではない)」という状況も起こり得ます。

 

月間支出が100万ルピア違うだけでクラスが変わることもあるSESですが、平均所得がまだまだ低いインドネシアでは小さな差が大きいのです。

インドネシアのマーケッターと話すとこのSES AやSES Bなどの違いが肌感覚にまで落ちているので「なるほど」と思わされます。

郷に入りては郷に従え。

インドネシアにおいてはインドネシア流の考え方に沿ってマーケティング活動を進めることもやはり大切だと思います。