最終更新日 2026年6月4日
インドネシアからの訪日旅行者数は、2025年に640,577人を記録しています。
そうした中で、インドネシア人旅行者の旅行手配がどのように変化しているか——という問いを立てたとき、OTA(オンライン旅行代理店)の存在を外して語ることはもはやできません。旅行会社の店頭に行かなくても、スマートフォン一つで航空券もホテルも手配が完結する環境が、インドネシアでも当たり前になっています。
本記事では、FIT化が進むインドネシア市場において、OTAの主要なプラットフォーム、そしてそれらがどう使われているかを整理します。
インドネシア旅行市場とFIT化の現在地
インドネシアの海外旅行市場を語るとき、まず押さえておくべきなのがFIT(Free Independent Traveler)の急速な広がりです。かつては旅行代理店が手配するパッケージツアーが主流でしたが、スマートフォンの普及と決済環境の整備が進んだことで、個人が自分で旅程を組む旅行スタイルへの移行が加速しています。
実際、観光庁の訪日外国人消費動向調査によれば、訪日インドネシア人の8割以上が個別手配(FIT)です(詳しいデータは「インドネシアの訪日インバウンド事情」にまとめています)。当社が訪日観光レップ業務を通じて現地旅行会社の方々と情報交換していると、「B2Cでは旅行代理店を頼る人は年々減っている」という声を頻繁に耳にします。これは特定の旅行会社だけの話ではなく、複数の会社が口を揃えて言うことなので、市場全体のトレンドとして受け止めていいでしょう。
こうした背景の中で、OTAが旅の入口として果たす役割は確実に大きくなっています。
インドネシアで使われている主要OTA
インドネシアのOTA市場は、地場2強とグローバル勢が混在する構図です。それぞれの特徴を整理します。
ローカル2強——TravelokaとTiket.com
インドネシアのOTAといえば、まず名前が挙がるのがTravelokaです。2012年に創業し、インドネシアを起点にシンガポール、マレーシア、タイ、フィリピンなどへ事業を拡大してきた東南アジア最大級の旅行予約プラットフォームで、アプリのダウンロード数は1億4,000万回以上を誇ります。航空券・ホテルの予約に加え、アクティビティや旅行保険、さらには通信SIMまでをアプリ内で完結させる「オールインワン型」の設計が特徴です。
注目すべきは、2024年6月にTraveloka Japan株式会社を設立し、六本木ヒルズに日本拠点を構えたことです。日本市場への本格参入という意味でも、同社のインバウンド領域における存在感は今後さらに高まるとみています。
もう一方のローカル勢がTiket.comです。2011年創業で、Travelokaと並ぶインドネシア二大OTAの一角を担います。航空券・ホテル・コンサートやイベントチケットまでカバーしており、特に若年層やデジタルネイティブ世代に根強い支持があります。
グローバル勢——Agoda・Booking.com・Trip.com
グローバルOTAの中ではAgodaが東南アジアに強く、インドネシアでも利用者が多いプラットフォームです。ホテル予約に強みがあり、アジア太平洋地域の宿泊施設との連携が厚いため、日本旅行の宿泊先を探す際に参照されることも多くあります。Booking.comも認知度は高く、特に欧米系のホテルや高価格帯の宿泊施設を探す際に選ばれる傾向があります。Trip.comは中国発のOTAですが、アジア全域でのプレゼンスを拡大しており、インドネシア市場でも一定の利用者を持ちます。
ざっくりまとめると、インドネシア人旅行者は「まずTravelokaを見る、気になればTiket.comも確認する、宿泊はAgodaやBooking.comを使い分ける」という行動パターンが多いように見えます。
番外編:Klookの位置づけ
航空券・ホテルの予約が中心の上記OTAとは少し異なる存在として、Klookも触れておく価値があります。香港発のこのプラットフォームはアクティビティ・体験型コンテンツに特化したOTAで、インドネシア国内での認知度はTravelokaほど高くありませんが、訪日後の現地アクティビティを予約する場として一定の利用があります。日本在住のインドネシア人インフルエンサーがSNSのプロフィールにKlookの紹介コードを載せているのを目にすることがありますが、これはまさに「日本に来るインドネシア人フォロワーに向けて現地体験の予約を促す」という文脈です。
なお、TravelokaやAgodaなどの既存OTAも現地到着後のツアー・アクティビティを販売しており、体験予約という領域では一部競合関係にあります。当社が現地旅行会社から聞く話では、訪日インドネシア人のリピーターが増えるにつれ、「また同じ場所に行く」ではなく「今度は体験を深めたい」という志向が強まってきているとのこと。この流れが続けば、体験特化型のKlookの存在感がインドネシア市場でも増していく可能性は十分にあります。
OTA以外のトラベルフェアという選択肢
インドネシアの個人旅行者にとって、OTAと並ぶ重要な旅行探しのチャネルが「トラベルフェア」です。ショッピングモールや展示場を会場に定期的に開催されるこのイベントは、日本でいえばアンテナショップとトラベルショーを掛け合わせたような場で、旅行会社・航空会社・金融機関などが一堂に出展し、格安航空券やツアーパッケージを直接販売します。

当社でも業務の一環として現地のトラベルフェアに足を運ぶことがありますが、会場の熱気は相当なものです。添付の写真はその一例で、モールの吹き抜けフロアを埋め尽くすように旅行会社のブースが並び、常に来場者でにぎわっています。Golden Rama、Panorama JTB、Wita Tour、Avia Tourといった大手旅行会社がブースを構え、スタッフが来場者と直接商談する光景が続きます。
来場しているのは中間層から中間層より上の層が中心で、海外旅行に行ける経済力を持つインドネシア人の縮図といっていいでしょう。独身の普通のオフィスワーカーが掘り出し物のチケットを探しに来ている姿も見かけますし、旅行の予定がなくても、スタンプラリーや懸賞などのイベント目当てでモールに来た人が立ち寄り、そのまま旅行の話を聞いていく——そういった流れもあります。インドネシア人の旅行好きと、お金を使うことへの積極性を象徴する場だと感じます。
使い分けの構造としては、「旅行の時期に余裕がある場合はトラベルフェアで格安チケットを狙い、時期がある程度決まっていたり急ぎの場合はOTAで探す」という傾向があります。OTAは利便性、トラベルフェアはお得感と体験——という棲み分けです。
インドネシア人旅行者のOTA活用パターン
OTAが使われる場面は、航空券の検索・予約にとどまりません。旅行全体のプランニングにOTAが深く関わっている点が特徴です。
当社スタッフのインドネシア人の家族を例に挙げると、旅行を計画する際にまずTravelokaを開き、航空券とホテルがセットになったパッケージを検索します。日本への旅行だけでなく、インドネシア国内の移動でも同様で、OTAが旅行全般の入口として機能しています。Tiket.comも選択肢として確認することがあり、価格や条件を見比べてから決めるのが一般的なパターンです。
もう一つ注目したいのが、航空会社によるOTA活用です。当社がJNTO関連事業に関わる中で感じるのですが、航空会社がプロモーションを展開するとき、OTAはその主要チャネルの一つになっています。セールやキャンペーンを打つ際、OTAを通じた露出と予約誘導を組み合わせることが、航空会社にとって当たり前の選択肢になっているという印象です。
また、OTAで予約できる対象は旅行商品にとどまりません。現地で使う通信SIMやデータパッケージもTravelokaなどで手配できるため、出発前の準備から旅先での実用品調達まで、一つのアプリ内で完結するエコシステムが出来上がっています。これがOTAへの依存度を高めている一因です。
訪日プロモーションにおけるOTAの位置づけ
ここまで見てきたように、OTAはインドネシア人旅行者が旅を計画する際の重要な接点です。ただ、OTAはあくまで「旅の入口・予約の場」であり、旅行者がそこに辿り着くまでのプロセスがあることは忘れてはいけません。
旅行先として日本が候補に上がるのは、SNSやウェブ上での情報収集、口コミ、メディア露出などを通じてです。その後、具体的な旅程を検討する段階でOTAが使われます。つまり、OTAに掲載されることは必要条件ですが、それだけで訪日促進が完結するわけではありません。
訪日を推進したい日本の事業者・自治体にとっては、OTAの特性と使われ方を理解した上で、その前段の「行きたいと思わせる」コミュニケーションにどう取り組むかが問われます。Travelokaが日本拠点を設立したことで、同社との直接的な連携を検討する選択肢も生まれています。OTA活用を視野に入れている方は、まず同社の日本法人にコンタクトを取ることが現実的な第一歩です。
まとめ
インドネシアの個人旅行市場では、FIT化を背景にOTAの役割が急速に高まっています。TravelokaとTiket.comというローカル2強を中心に、Agoda・Booking.com・Trip.comといったグローバル勢も加わる競合環境の中で、旅行者は航空券・ホテルから通信SIMまでをスマートフォン一つで手配します。一方でトラベルフェアという独自のチャネルも健在で、時間的余裕がある旅行者を中心に格安チケット獲得の場として機能しています。
OTAを「予約ツール」として捉えるだけでなく、インドネシア人旅行者の旅行行動全体の中にどう位置づけられているかを理解することが、効果的な訪日プロモーションの出発点になります。
インドネシア市場を対象とした訪日プロモーションのご相談は、当社までお気軽にどうぞ。現地の旅行会社・メディア・プラットフォームとの接点を活かし、貴社の課題に合った情報をご提供します。

















