現地パートナーとの連携強化を狙い、ここ1ヶ月ほどローカル系調査パートナー複数名と会っていました。
どのパートナーもこの道10数年のプロフェッショナル揃いで、頼もしい限り。
ご提供できることも増えたのでぜひご相談ください。
それはさておき、パートナーと話をする中で気になる話題があったので筆を取りました。
現地リサーチャーの皆さんが口を揃えて言っていたのが「Web調査の精度の低さ」。
もちろん、彼らは一流のリサーチ会社でWeb調査もケイパビリティに入っており、事実引き合いも多いため、Web調査領域を貶めるためのネガティブキャンペーンというわけではありません。
真摯なプロとしての提言です。
発言を取りまとめると、下記の理由でインドネシアでのWeb調査は発展途上である、とのことです。
理由①インドネシア人の性格
彼らはあくまで日本人と比較して、と前置きをしていましたが、インドネシア人は真面目とは言えない性格で集中力も高くはない、とのこと。
対面でチェックできないWeb調査で何が起こるかというと、
- 長い(※)調査だと集中力が切れるため後半の回答が適当になる
- 同一の回答者が複数IPアドレスを使って複数名分の回答を送ってくる
※10問超えたら多いかも、というレベル感です
などなど、無効回答が多く入ってしまう。
いや、無効回答は日本でも混ざり得るし、事前スクリーニングや回答内容の精査段階で除外すれば良いじゃないか、という話なのですが、
- 回答者の事前スクリーニングで抑えることもできるが、手間と時間がかかる
- 全回答者を管理することは難しく、全回答者を優良回答者だけで埋めようとすると回答者の幅が著しく狭まる
- Web調査は低コストで素早く実施できることが魅力だが、事前及び事後のスクリーニングの手間が増えることでWeb調査のメリットが相殺される
というまっとうな反応。
日本とは比較にならないほどデータの精度が低いのでしょうね。
まぁ、この適当さがインドネシア人の愛すべきところでもあるのですが、仕事となると少し辛いところです。
理由②インフラ環境
有名な話でもありますが、インドネシアのインターネット環境はアジア最弱、と言われています。Wi-Fiの接続はできますが、回線が細く、スピードが冗談抜きで日本の100分の1程度です。
そのため、画像や動画を多用する複雑な調査はもちろん、シンプルな調査でも途中で回答者がネット環境から落ちてしまうことが少なくありません。
こぼれ話ですが、チャットを使ったOnline FGDsなどでは途中で急に参加者の反応が無くなることもあり、ファシリテーターがその都度電話で確認するそうです。
理由③インターネット普及率
スマートフォン、タブレットなどの端末が急速に浸透しているとはいえ、インドネシアではまだまだインターネットにアクセスできない人も多く、利用者の属性に限りがあります。
政府関係機関(インドネシア情報通信省)の公式見解によれば、昨年末の時点でインターネット利用者の数は7,300万人を突破したところであり、全人口の29%です。急速に伸びてきてはいますが、まだ多いとは言えません。ちなみに総務省によれば日本は82.8%とのこと。
普通に考えればお金持ち&首都圏から浸透していくので、全国津々浦々広い消費者に使って欲しい、という消費者向け商品の調査だと厳しいかもしれませんね。
インターネット普及率などの情報は「インドネシアのソーシャルメディア利用者数などのデータを整理してみた」という投稿にまとめてあるのでご興味ある方はご一読ください。
最後に
このような状況もあり、どのような調査がいいのか?と議論をすると必ず「対面」と答えが返ってきます。
インドネシア人は体裁を気にする人が多いので、対面だと真面目になるそうな。
それでも、適当な回答を防止したり、逆に体裁を気にしすぎた回答にならないように、調査員がその場で見抜いていく力が必要です。
この国では調査ファシリテーターの専門性が高く、リサーチプロフェッショナルになれば、常に需要がありご飯には困りません。
Web調査を否定するような内容になってしまいましたが、もちろん状況によっては有効な場合もあるでしょう。
現地の実情を鑑みて適切な手法を選んでいくことが重要ですね。