現地事業展開で外せない情報が最低賃金です。
必ず事前調査で動向を把握しておく必要があります。
現在の日本では最低賃金が特別なニュースになることは少なくなりましたが、
経済成長著しいインドネシアでは、最低賃金が毎年大幅に上昇しており、大きなニュースです。
インドネシアの最低賃金は毎年年末に翌年の最低賃金が発表されます。
今回は日本人や日本企業に馴染みがある州をピックアップしてお伝えします。
さて、上記の表をみると近年は上昇率は抑えめであると言われながらも、
2年間で14~66%程度増加しています(地域による)。
数年で給与が倍々に増えていく可能性があり、インドネシアの方々が消費に前向きなことも納得できます。
まるで日本の高度経済成長期のようですね。
しかし地域格差も激しく、同じジャワ島内でもトップのジャカルタ特別州と中部ジャワ州では
最低賃金の開きが2.45倍もあります。
日本とは大きな違いですね。
当然物価も異なるので、一概に「生活レベルに差がある」とは言えませんが、
ここまで差があると人の流れ、物の流れに支障が出るので健全とは言えません。
地域差の撲滅は現政権の重点目標の一つでもあり、今後の動向には要注目です。
もう少し個別エリアを見ています。
皆様おなじみのバリ島ですが、月額最低賃金は160万ルピア(約1万6千円)、賃金上昇率は2年間で22.7%です。
日本企業が多数進出する西ジャワ州の月額最低賃金は約110万ルピア(約1万1千円)、賃金上昇率は2年間で33.2%です。
首都であるジャカルタ特別州の月額最低賃金は270万ルピア(約2万7千円)、賃金上昇率は2年間で22.7%です。
他の地域に比べるとジャカルタ特別州の賃金上昇率は低めですが、年1割ほどの上昇は経営者にとっては大きな負担です。
また、労働組合の争議も盛んになってきており、工場労働者の賃金上昇圧力は外資系企業にとっても経営の不安要因にもなっています。
労働組合が無いような小規模の事業主においても、最低賃金上昇に合わせて従業員が給与交渉を仕掛けてくることも多々あります(来月から●●ルピアにしてくれないと辞めます!と)。
インドネシア人は転職に対する抵抗があまり強くありません。
現給与の2割増しで条件提示すれば驚くほど簡単に引き抜ける(引き抜かれる)、と言われています。
一部のエリート層を除くと、まだまだ長期的な「キャリア志向」というものが存在していないように感じます。
そのため「専門家」が育たない。専門家集団による分業が進んでいない面があるため、非効率な部分が多くあります。
なかなかに大きな問題だと感じています。
依頼したエアコン修理に来た担当者がエアコンを直せないとか・・・
カーテンレールを取り付け完了後2時間でレールが崩壊したりとか・・・
インターネット開設に来たのに機材が足りなくて帰っちゃうとか・・・
事例が小さくてすいません・・・。
上記の例は軽いジョークですが、専門家育成は大きな課題だと思っています。
話を戻します。
年々上昇を続ける最低賃金。
しかしながら、インドネシアは人口が多く、求人数より求職者数がはるかに多い状態が続いています。
また、賃金上昇が最低賃金に張付いたままの人材も多く、実質的な賃金上昇がなかなか進まないという問題もあります。
需給バランスの問題以外にも、経営者モラル、専門スキルの欠如、など様々な要因があります。
いずれにしろ、インドネシア進出をお考えの企業にとってインドネシアの賃金推移は大きなテーマになると思いますので、引続きチェックしていかなければなりませんね。