最近中国からの訪日観光客による「爆買い」に陰りが見えてきたというニュースをよく見ます。

この流れを経て、ある種バブル気味だった中国寄りの訪日インバウンドブームが落ち着き、他国にも目を向けた包括的な観光立国の動きが進んでいくのでしょう。

東南アジアに関わる人間としては、中国の影になって目立たなかった東南アジアからの訪日客への注目が高まってくれるといいなと思っています。

しかし、かなりの量が揃っている中国人旅行客の情報と比較して東南アジアの情報はあまり目にする機会も無いでしょう。また、例のごとくインドネシアに関しては情報自体が存在していなかったりします。

日本とは異なりインドネシアの場合は統計局のデータが十分とは言えません。正確に述べると、政府の方針によって蓄積するデータがころころ変わります。

現在のインドネシア政府はインドネシアへ来る旅行客増加を重視しているので、インドネシアにとってのインバウンド情報は手に入りやすいのですが、インドネシアから外に出ていく人たちの情報は不足しています。

実際にジャカルタの中に住んでいると、「日本に行ってみたい」という声をたくさん聞きますし、ついつい「ポテンシャルはあるんじゃないですか?」と言いたくなります。

とはいえ客観的なデータが無いとなんとも説得力に欠けるので、私自身が納得感を得るためにも情報をかき集めてみました。

 

インドネシアから日本への訪日外客数(2016年時点)

まず考えるスタート地点として、「今どれくらいのインドネシア人が日本に来ているのか?」を見てみます。

こんな時は日本政府観光局(JNTO)。さすがの情報量で何でも出てきます。

最新の月次情報だと、国ごとの季節要因が入ってくるので通年で見てみましょう。

2015年の国別訪日外客数を引用します。

国別訪日客数(2015年)

年間総数約2,000万人のうち、中国500万人をはじめ、韓国、台湾あたりの隣国からの訪問客が多いことがわかります。

東南アジアだけに目を配ると、タイが伸率こそ低いものの約80万人で頭一つ出ている印象です。それ以下は20~30万人程度でほぼ横並びですね。

インドネシアは約20万人でやや後続、伸び率もまさに真ん中程度といった印象でしょうか。

このデータだけだと、インドネシアはまさに「凡庸」。次に注力するならタイかな!となりますね。

もう少し違った角度で見てみます。

 

東南アジア各国の訪日客数比率(vs人口)を比較してみた

先ほどのJNTOのデータを少し加工させていただきます。

訪日客数だけだと味気ないので、各国の人口と客数を並べて対人口比における「対人口訪日客数率」を出してみました。

各国総人口のうちどれくらいの人たちが日本に来たのか、という指標です。

実際はリピーターも含まれているので純粋な対人口比にはなりませんが、参考にはなるでしょう。

訪日客数の比率(対人口)

先ほどは東南アジアの中でタイだけ突出していると書きましたが、対人口比だとシンガポール(5.6%)が突出。その後、タイ(1.2%)、マレーシア(1.0%)が並び、残りはガクッと下がります。

東アジアの香港や台湾の数字は極端(地理的に近いのでリピーターも多いのでしょう)ですが、地理的条件が似ている同じ東南アジアのシンガポールと比べると、タイ含めた他国はまだまだ低い。

インドネシアはわずか0.1%となっています(少な!)。

ただ、仮に2.5億の巨大人口を抱えるインドネシアがこのまま成長し、昨年のタイと同じ1.2%になったらそれだけで300万人が来ることになります。フィリピンやベトナムも同じく1.2%になったと仮定して、両国の訪日外客数を合算したとしても190万人程度でありインドネシア一国分に満たないです。

巨大市場と言われる所以ですね。

少し特殊な国である先進国シンガポールまでいけなかったとしても、同じ途上国のタイで1.2%の実積があるならば、周辺諸国もその程度まで膨れる可能性は十分にあるでしょう。

いやー、それにしても中国とインドのポテンシャルは果てしないですね。中国は500万人近く来ているのに、対人口比0.4%程度のボリュームです。インドは小数点以下一桁以下でした(まだまだ縁遠い感じがしますよね)。

さて、話を戻しましょう。

今まとめたのはあくまで「なんとなくなポテンシャル」を並べた話です。次に気になるのは、「実際にポテンシャルを発揮しながら増えていくのか?」という点です。

 

インドネシアからの海外旅行客数が増加していく可能性は?

まず私が気になったのが「日本云々の前に、インドネシア人で海外旅行に行ける人ってどれくらいいるの?増えるの?」という点です。見込み客(海外行ける人)がいないと客(日本来てくれる人)なんて取れないですから。

つまり、インドネシアとしてのアウトバウンドデータ欲しい。ところが、例のごとく目ぼしいデータが無い!こういう時は欧米企業のリサーチデータです。マスターカードが2014年に発表した「The Future of Outbound Travel In Asia/Pacific」というレポートを見てみます。

各国のアウトバウンドフライト予測

国別にアウトバウンドトラベルがどれくらい増えていくのか?を予測したデータで、単位はMillionです。

これを見ると、2020年時点でインドネシアは年間1,060万。この数字はタイ(870万)やベトナム(640万)、フィリピン(620万)の近隣諸国を超え、インドネシアがシンガポール(1,180万)や香港(1,160万)と並ぶアウトバウンド中堅国になる可能性を示しています。その他、インドネシア以外にもマレーシアが台頭してくる可能性が高いですね。

ただ、インドネシアの数字はLPO(Leisure Purpose Trip)で、マレーシア含む他国はほぼAP(All Purpose Trip)となっています。AP内でLeisureが占める比率はわかりませんが、純粋な「観光目的の海外旅行者数」でいくと、近い将来インドネシアが東南アジアで1位になっていく可能性があるかもしれません。

1,000万人という数値も2.5億の人口を考えると少ない数字なので、その後も伸びていけば中国のように頭一つ飛び出た市場になる可能性は高いと考えています。

それでは、仮に海外旅行に行ける人が増えたとして、次に私が気になったのは「いったいその中でどれくらいの人が日本に来てくれる可能性があるのか?」ということです。

 

インドネシア国内で訪日観光人気は高まるのか?

自分でテーマ設定しておいてアレですが、これはかなりの難問ですね。

定性的には増えるんじゃない?という気がしていますが、まず定量データから探ってみます。

これまた体系的なデータが無いのですが、インドネシア語で気になる記事とデータを発見しました。

Korea, Tujuan Favorit Wisatawan Indonesia

「韓国がインドネシア人の旅行先として人気だよ」という記事。

記事自体の内容は置いておいて、気になったのは記事内に張ってあるこちらのデータです(引用します)

インドネシアにおける2014年の出国先データ

*Sumber:

Total Jumlah Wisatawan Outbond: Website resmi Kementrian Pariwisata Indonesia

Jumlah Wisatawan Outbond ke Setiap Negara: Website resmi Badan Pariwisata setiap Negara

とあるので、こちらのデータは「インドネシア観光省による、アウトバウンド旅行者数データ2014」です。

インドネシア観光省のWebでオリジナルデータを見つけることができませんでしたが、データを見ていきます。

表の読み方はシンプルで、Jumlahは総数、Tingkat pertumbuhany-o-yは成長率です。

合計数が約800万人。先ほどのマスタカードデータだと2014年の観光アウトバウンド数予測値が680万人になっていましたので、こちらのデータの数字はビジネストリップも含む数字なのでしょう(もしくは観光客だけのデータだけど予想以上に伸びた、という楽観的な捉え方ができなくもない)。

細かいところを見てみます。

まず、隣国のシンガポールが圧倒的に人気であることがわかります。

また、全体的に成長率が微減(-0.93%)の中でマレーシアと韓国がともにプラス10%以上成長しており伸びていたことがわかりますね。マレーシアは同じムスリムの国なので理解しやすいですが、日本と距離的にそこまで変わらない韓国が6位に入っており、韓国の強さがうかがえます。

そして、なんと日本は入っていないですね…。衝撃。圏外、ということなのでしょうか?

他にも2016年にJNTOが発表したデータがあったので見てみます。見やすいように少し加工して年次伸び率を追加しています。

アジア各国へのインドネシア人訪問者数

なんと、このデータはインドネシア側の保持データではなく、JNTOが各国の入国管理データを調べて作成されたそうです(お疲れ様です)。

2014年マレーシアの訪問者数が先ほどより50万ほど増えていますが伸び率はほぼ同じですし、他国データはほぼ一致しているので信憑性は高いでしょう。

このデータを見ると日本は「絶対数はまだ低いものの、年々客数を増やしている」様子がわかります。特に2012年あたりから伸びていますね。

2014年で約16万人。先ほどの「2014年インドネシア観光省によるデータ」に入れるのであれば10位のオーストラリアと競うレベル、つまり「次点」でもれたようですね。

他に特筆事項があるとすれば、2014年の伸び率でしょう。116%(+16%)成長なので、韓国(インドネシア側データによれば+10.1%)、マレーシア(本データだと+11%)を抜いて最も伸びた国ということになります。

日本の地理的条件を踏まえれば、今後このまま伸ばしていければ韓国と凌ぎを削って争奪戦をしていくことになるのでしょう。

ちなみに、2015年に日本に来たインドネシア人の数は205,083人で伸率+29.2%。仮にこの勢いを維持できれば2020年のオリンピックイヤーには73万人、現在から10年後の2026年には265万人が来ることになります(勢いが続けばですが)。

 

中に住んでいる視点での定性的な補足

インドネシアと言えば韓国人気が高く、韓国一人勝ちのような意見をお持ちの方もいるかもしれません。確かに韓国ドラマなどのエンタメ産業は強いです。ただ、実際に中に住んでいると旅行に関しては日本人気も強くなっていると感じます。

トラベルフェアでも韓国ブースはそっちのけで、日本ブースに人だかりができていることも多いです。最近の日本陣営の頑張りが短期的に効いているだけ、の可能性もありますがそれでも結果は結果なので私はポジティブに捉えています。

実際に周囲でも日本旅行に行くカップルや夫婦とよく出会います。先日も「家族旅行兼ハネムーンで日本に1週間滞在する、というムスリムカップルと出会いました(温泉探しを3時間かけて手伝ってあげましたw)。

現在のインドネシアで日本に行けるのは裕福な層に限られますが、そのすべてが「富裕層」かというとそうでもないです。イメージとしては新興のミドルアッパー層あたりで、大卒で専門職としてバリバリ働くホワイトカラーの若い一般人でもお金をためて年一旅行で日本に行ったりします。

インドネシア人にしたら航空券高すぎて買えないでしょ?と思われる方も多いかもしれませんが、「トラベルフェア」を上手に使えば激安チケットが手に入ります。

インドネシアは他東南アジア諸国と同じで、ツアー旅行ではなく個人で全部用意することが多い。まずはチケットだけイベントで掘り出し物を探し、それに合わせて休みを調整して休暇を作ります(そこは欧州の人みたいですよね)。ちなみに、トラベルフェアでは往復4万円を切るチケットが手に入る場合もあります。

ご飯や文化を楽しみたい、という目的がメインではありますが、中には「インフラが最高に整っている日本を一度見ておきたい」という真面目な人もいたりします。

 

さて、ここまでで

  • インドネシアで海外旅行を楽しむ人は増えていき、東南アジアで1位のアウトバウンド国になる日がくるかも
  • 現時点での日本旅行者は多くはないが、今後増えていく可能性はある

ということを見てきました。

最後にもう一つだけデータを見ます。

 

インドネシア人訪日観光客の増加は日本の観光産業を潤すのか?

もちろんお金がすべてではないですが、ビジネスとして捉えた場合はお金も大事。ここはシンプルに、「お金どれだけ落としてくれるの?」というデータを見て終わりたいと思います。

訪日外国人消費動向調査

「訪日外国人消費動向調査(観光庁、2016年)」より引用

観光庁調べの「外国人旅行客一人あたりいくら使ってくれたの?」というデータです。

まだ爆買いが収まる前なので中国人の買物代が飛びぬけていますね。桁が違います。

東南アジア勢はフィリピンの12.6万円からベトナムの19.4万円まで差があります。インドネシアは14.7万円とこれまた真ん中。

細かい上昇下降はあるでしょうが、東南アジアといえども台湾や香港などの東アジア勢と同じくらいお金を使う、ということは言えそうです。

インドネシア人の所得が伸びていくことを鑑みると、「そこまで圧倒的にお金を落とすことはないが極端に少ないということもない」というのが現時点での回答でしょう。

しかし韓国人はお金使わなすぎですね……逆にそこが気になってしまいました。

あとはイギリス人ホテル高すぎ、とかスペイン人交通費かけすぎ、など。面白いですね。

 

さて、長くなりましたが色々と調べて自分自身もだいぶ整理できました。

次は「日本旅行に行くインドネシア人の行動を考える」のように深堀していきたいのですが、疲れてしまったのでまた次回にします。

インドネシアへのプロモーションをお考えですか?

要件が固まる前の段階でもお気軽にご連絡ください。現地の知見を踏まえ、最適な方法を並走して一緒に考えさせていただきます。
Webコンサルティング

久しぶりのブログ更新となります。

最後の更新が2015年11月のインターンブログなので、実に9カ月ぶりとなってしまいました。

インドネシアに在住しているとインドネシアの中からの視点があり、外からは得られない情報もあります。

インプットの整理も含めて、もう少しこまめに情報発信をしていきます。

 

2016年下期での変更点

当社では主にインドネシアへの進出支援ということで調査や現地での事業運営サポートを行ってまいりました。

2016年も下期に入り、インドネシアへ関わり始めてから約2年の歳月が経過しました。

実は会社の体制も少々マイナーチェンジを行いました。

具体的な変更点をこの場を借りてお伝えします。

 

 

変更点①新メンバーの参画

Webコンサルティング

Webサービスの立ち上げや運営に精通した下田祐介が本年下期よりJAPASIANへ参画しました。

下田はイギリス、フィリピン、シンガポール、と主に英語圏を渡り歩きながら複数Webサービスの立ち上げや運営の経験を積んできました。

特にシンガポールではSkipforward Pte Ltdという会社を設立し、CEOに就任(現在も兼任)。

Skipforwardではクラウドタスク管理ツール「Jooto」を主に運営し、現在進行形でサービスの成長に邁進しています。

基本的には自社内や共同事業での新規事業開発を行う形となりますが、面白そうなお話があればお気軽にお声掛けください。

また、彼が心血注ぐ「Jooto」もご利用いただければ幸いです(基本利用は無料です!)。

 

 

変更点②訪日インバウンド支援

訪日インバウンド支援

インドネシアに2年在住して体感することの中に、「若年層を中心とした中間層の増加」があります。

ハレとケの性格が強いインドネシアマーケットでは抑えるところは残念なくらいお金を使いませんが、思わぬところで一気に消費することもあります。

そのうちの一つが旅行。

細かくはまた別に頁を割いてご紹介予定ですが、海外旅行者数も増加しており、さらに嬉しいことに日本の人気も再燃しています。

当社では実験的にJapan Halal Walkerという「ムスリム特化型の日本観光情報発信ページ」を運営してきましたが、投稿に対する反応も一定量あり、このノウハウを活かしてSNS上での情報発信を支援する「インドネシア向けFacebookページ情報発信ライトパック」を提供開始しました。

また、他にもFacebookたけに留まらない情報発信支援(主に現地ローカルデジタルエージェンシーとの協業による提供)、インバウンドニーズを探るグループインタビューなども提供可能な体制となっています。

インドネシアはタイ・ベトナム・マレーシア3国を足したよりも人口が多く、ASEAN随一の市場ポテンシャルがあります。

もし少しでも先を見て動いておきたい、という企業様がいらっしゃればこちらもお気軽にご相談いただければ幸いです。

インドネシアへのプロモーションをお考えですか?

要件が固まる前の段階でもお気軽にご連絡ください。現地の知見を踏まえ、最適な方法を並走して一緒に考えさせていただきます。

現地パートナーとの連携強化を狙い、ここ1ヶ月ほどローカル系調査パートナー複数名と会っていました。

どのパートナーもこの道10数年のプロフェッショナル揃いで、頼もしい限り。

ご提供できることも増えたのでぜひご相談ください。

それはさておき、パートナーと話をする中で気になる話題があったので筆を取りました。

現地リサーチャーの皆さんが口を揃えて言っていたのが「Web調査の精度の低さ」。

もちろん、彼らは一流のリサーチ会社でWeb調査もケイパビリティに入っており、事実引き合いも多いため、Web調査領域を貶めるためのネガティブキャンペーンというわけではありません。

真摯なプロとしての提言です。

発言を取りまとめると、下記の理由でインドネシアでのWeb調査は発展途上である、とのことです。

 

 

理由①インドネシア人の性格

彼らはあくまで日本人と比較して、と前置きをしていましたが、インドネシア人は真面目とは言えない性格で集中力も高くはない、とのこと。

対面でチェックできないWeb調査で何が起こるかというと、

  • 長い(※)調査だと集中力が切れるため後半の回答が適当になる
  • 同一の回答者が複数IPアドレスを使って複数名分の回答を送ってくる

※10問超えたら多いかも、というレベル感です

などなど、無効回答が多く入ってしまう。

いや、無効回答は日本でも混ざり得るし、事前スクリーニングや回答内容の精査段階で除外すれば良いじゃないか、という話なのですが、

  • 回答者の事前スクリーニングで抑えることもできるが、手間と時間がかかる
  • 全回答者を管理することは難しく、全回答者を優良回答者だけで埋めようとすると回答者の幅が著しく狭まる
  • Web調査は低コストで素早く実施できることが魅力だが、事前及び事後のスクリーニングの手間が増えることでWeb調査のメリットが相殺される

というまっとうな反応。

日本とは比較にならないほどデータの精度が低いのでしょうね。

まぁ、この適当さがインドネシア人の愛すべきところでもあるのですが、仕事となると少し辛いところです。

 

理由②インフラ環境

有名な話でもありますが、インドネシアのインターネット環境はアジア最弱、と言われています。Wi-Fiの接続はできますが、回線が細く、スピードが冗談抜きで日本の100分の1程度です。

そのため、画像や動画を多用する複雑な調査はもちろん、シンプルな調査でも途中で回答者がネット環境から落ちてしまうことが少なくありません。

こぼれ話ですが、チャットを使ったOnline FGDsなどでは途中で急に参加者の反応が無くなることもあり、ファシリテーターがその都度電話で確認するそうです。

 

理由③インターネット普及率

スマートフォン、タブレットなどの端末が急速に浸透しているとはいえ、インドネシアではまだまだインターネットにアクセスできない人も多く、利用者の属性に限りがあります。

政府関係機関(インドネシア情報通信省)の公式見解によれば、昨年末の時点でインターネット利用者の数は7,300万人を突破したところであり、全人口の29%です。急速に伸びてきてはいますが、まだ多いとは言えません。ちなみに総務省によれば日本は82.8%とのこと。

普通に考えればお金持ち&首都圏から浸透していくので、全国津々浦々広い消費者に使って欲しい、という消費者向け商品の調査だと厳しいかもしれませんね。

インターネット普及率などの情報は「インドネシアのソーシャルメディア利用者数などのデータを整理してみた」という投稿にまとめてあるのでご興味ある方はご一読ください。

 

最後に

このような状況もあり、どのような調査がいいのか?と議論をすると必ず「対面」と答えが返ってきます。

インドネシア人は体裁を気にする人が多いので、対面だと真面目になるそうな。

それでも、適当な回答を防止したり、逆に体裁を気にしすぎた回答にならないように、調査員がその場で見抜いていく力が必要です。

この国では調査ファシリテーターの専門性が高く、リサーチプロフェッショナルになれば、常に需要がありご飯には困りません。

Web調査を否定するような内容になってしまいましたが、もちろん状況によっては有効な場合もあるでしょう。

現地の実情を鑑みて適切な手法を選んでいくことが重要ですね。

 

 

 

 

 

 

インドネシアへのプロモーションをお考えですか?

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現地に住んでいるという理由で、「インドネシアではどのようなビジネスを展開すると当たるのか?」という質問を受けることがあります。

日本と比較すると足りないものだらけなので、「これがあれば良いのに」というサービスは確かにいくつかあります。

 

私が日本を発つ時によく言われたのは、「日本が通った道を他国も通るので、日本が同じ発展レベルだったときに必要とされたサービスを提供すれば良い」ということでした。

しかし現地で生活・ビジネスをしてみると、必ずしもあてはまるものではないと考えています。

 

確かに、日本との比較で足りないものはたくさんあります。

その中にはインドネシアでも今後必要とされるものもありますが、ITによるビジネスのフラット化、その国ならではの状況があり、独自の発展を遂げる分野も多々あります。

そこからインドネシアならではのサービスが生まれています。

この「インドネシアならではのサービス」という視点で最近気になるのは「GOJEK(ゴジェック)」というアプリです。

GOJEKの基本サービス

GOJEK

GOJEKアプリのトップページ(写真はGOJEKの公式Webより引用)。

 

いわゆる配車アプリで、インドネシア人の足であるバイクタクシー「OJEK(オジェック)」を対象としています。

GOJEKが提供するサービスは、

  1. INSTANT COURIE(バイク便)
  2. TRANCEPORT(バイクタクシー)
  3. SHOPPING(100万IDRまでの買い物代行)
  4. GO-FOOD(フードデリバリー/2015年5月時点では無料キャンペーン中)

の4つで、現在はジャカルタでのみで展開しています。

 

GOJEKを広げた「インドネシアらしい理由」

さて、このGOJEK。OJEKをテーマとしているからユニークというわけではなく、移動以外の買い物代行機能まで備えているからユニーク、というわけでもありません。

私はその広がり方の理由がインドネシアらしくてユニークだなぁ、と感じています。

渋滞の深刻さが世界一と(※)されるジャカルタですから、ユーザーがこのサービスを使うのは確かに「便利で楽ちん!」という理由もあります。

※英国のエンジンオイルメーカー「カストロール」が2015年に発表した調査で、ジャカルタは『渋滞が最も深刻な都市』とされました。自動車がまったく進まないことも多く、OJEKを手軽に呼び出して利用できることは利便性が高いです。

ただ、理由はそれだけではありません。

「安全・安心」という理由も強くあるようです。

 

GOJEKの浄化作用

GOJEKのドライバーは完全登録制で、本部が面接をして信頼に足る、と判断したドライバーのみGOJEKドライバーになれます。

DRIVER

ドライバーの顔写真と名前が表示される (写真はGOJEKの公式Webより引用)。

 

この徹底した管理の背景には、「OJEKはインドネシア人の身近な乗り物でもあるが、必ずしも安全・安心な乗り物ではない」、という状況があります。

もう少し具体的に書きます。

まず、OJEKの価格は交渉制なので価格トラブルが発生することがあります。

また、運転が荒い運転手もいます(結構な確率でスピードメーターが壊れていたりします)。

さらにそれより危険なのは犯罪に巻き込まれるケース。

現地人に聞いた話だと、裏道に連れ込まれての恐喝や、女性の場合は過去に強姦事件も起きているようです。

 

その点、GOJEKでは料金は事前に明示されますし、身元情報も確かなドライバーを採用しているので安心して利用できます(運営側も買い物代行のキャッシュを預けるので当然といえば当然ですが)。

ドライバーもトラブルを起こして除名されるのは避けたいので、犯罪はもちろん危険な運転すらしないかもしれません。

 

そうなると、GOJEKが浸透する結果として、悪質なOJEKドライバーは仕事を取りにくい状況となり、良質なドライバーが増えます。

極端な言い方ですがGOJEKは一種の浄化機能を担っているのではないでしょうか。

 

この「安全・安心」は消費者だけではなく政府も動かしています。

ジャカルタ市はGOJEKの浄化機能を認めており、すでにジャカルタ市内公共機関の連携を強める、と表明しています(具体的な方法論はわかりませんが)。

 

 

まとめ

まとめるとGOJEKは、

 

・ドライバーには積極的に仕事を取る機会を。

・消費者には利便性と安心感を。

・政府にはドライバーの浄化機能を。

・事業社には収益として運賃の一部を。

 

もたらします。

世界的な潮流でもある配車アプリのシステムを用いながら、うまくインドネシアならではの課題を拾い上げ、3方どころか4方よし、のサービスに仕立て上がっています。

国の発展状況はまだまだ、とはいえ、インターネット社会なので入ってくる情報は先進国も発展途上国もそこまで変わりません。

今後もこのようにインドネシアならではの視点を持つサービスが登場してくるのかもしれませんね。

 

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