
前回インドネシアにおけるインターネットとソーシャルメディアの利用状況について、DIGITAL 2023: INDONESIAのデータを参照しながらまとめました。
元々はソーシャルメディアの利用状況について知見をアップデートすることが目的でした。思いのほか、EC関連のデータも豊富にあったのでこちらの記事で備忘も兼ねてまとめておきます。
インドネシアのジャカルタ現地での生活者としてのコメントも交えながら、進めていきます。
【この記事でわかること】
- インドネシアでのEC利用者数や利用率
- インドネシアのECでは何が売れる?
- インドネシアで利用されているECプラットフォームは何か?
インドネシアネットユーザーのEC利用者数は?
インドネシアで消費者向けの商品をオンライン購入したことがある人は約1.79億人。
同レポートではインターネットユーザーの全体数を約2.13億人としていますので、ネットユーザーのうち約84%がECを利用していることになります。
1人当たりの年間平均使用額が313USDなので、1ドル134.9円で換算すると約4.2万円です。
コロナが収束してECへの一人当たり使用額は減ったものの、EC利用者数は増えています。
インドネシアECで売れるものは?
カテゴリ別の消費額を見ると、最も購入されているのは電化製品で、その後をおもちゃや趣味用品、さらにアパレルや家具と続いています。
こうして並べて見ると食品や飲料は少なく移りますが、私見を交えるならばこれは「単価が低い」ことが理由でしょう。
電化製品は他国と比較してもそこまで値段は変わりませんが(むしろ高い関税がある分割高かもしれません)、インドネシアで日常的に消費される食品や飲料は全体的に単価が低めです。
ECでの支払い方法は?
最も利用されるのがモバイル電子マネー(39%)。
2位が銀行振込(23%)で、3位がデビットカード/クレジットカード(17%)です。
インドネシアではここ数年でモバイル電子マネーの利用が一気に進みました。ECに限らず、オフラインの店舗でもQRコードから電子マネー決済へ簡単に進むことができます。
銀行振込についてはVirtual Accountという仕組みが普及しています。振込先や金額を打つことなく、購買ごとに発行されるVirtual Account Numberを銀行アプリにコピー&ペーストすることで、細かい入力をせず簡単に振込を完了することができます。
インドネシアではクレジットカードの普及が他国ほど進んでいませんが、このようなシステムがECの利用者増を支えています。
インドネシアで人気のECモール/プラットフォームは?
インドネシアには多数のECモールが切磋琢磨していますが、ここでは2023年第1四半期に最も訪問者が多かったモールを5つご紹介します。
元になるデータはSimilar Webのトランザクション数です。
【参考記事】5 E-Commerce dengan Pengunjung Terbanyak Kuartal I 2023
以下は2023年1月から3月の、「月単位での平均訪問者数」を表にしたものです。
Shopee | 1億5,790万 |
Tokopedia | 1億1,700万 |
Lazada | 8,320万 |
BilBil | 2,540万 |
Bukalapak | 1,810万 |
それぞれについて、簡単にご紹介します。
Shopee
Shopeeは2015年にシンガポールで創業したオンラインマーケットプレイスです。インドネシアを含む東南アジアほぼ全域に展開しています。
インドネシアでは後述する国産サービスのTokopediaが長らく王者でしたが、後発のShopeeが追い上げ、現在は利用者数1位の座を長らく死守しています。
「ゾロ目の日」などのキャンペーンも有名ですが、Shopeeの利用者数を増やすトリガーとなったのは何よりも「送料無料」のサービスです。送料無料を耳につくジングルに載せ、広告を大量投下しました。
現在では他のプラットフォームも送料無料は珍しくなくなりましたが、今でもShopee利用者には「送料無料」が理由で使い続けている方が多いです。
ちなみにDIGITAL 2023: INDONESIAのレポートでも、送料無料(Free Delivery)がEC購入を促す最も強いトリガーとして報告されています。
本記事執筆時点(2023年5月)では「後払い」を積極的にプロモーションしています。いつも「大衆」が求めているものを提供しているな、という印象を受けます。
Tokopedia
Tokopediaは2009年創業のインドネシア国産のECモールです。日本のサイバーエージェントグループやソフトバンクが投資したことでも有名です。
2021年には同じくインドネシア国産のオンライン配車アプリGOJEKと経営統合しGoTo Groupとなりました。GoTo Group は2022年にインドネシア証券取引所へ上場しています。
国産の強みを活かしながら、航空券やホテル、さらには公共料金の支払いなどあらゆるものをオンラインで支払えるようにした立役者の一人です。
現在でこそShopeeに利用者No.1のポジションを譲りましたが、長らく1位の座を守っていたサービスでもあります。
公式なデータはありませんが、現地の肌感で述べるのであれば「トレンド」に強いモールです。特に少し値の張る目新しい食べ物やファッションが積極的に販売されている印象があります。
送料無料戦略で追い上げられたShopeeに対して、どのような戦略で挑むのかが注目されるところです。
Lazada
Lazadaは2012年にドイツの企業Rocket Internetにより設立され、その後中国のアリババ・グループ(阿里巴巴集団)に買収されたECモールです。
アリババグループの資金力を活かし、東南アジア中に独自の強固な配送網を保持していることがLazadaの大きな特徴でしょう。
最近は日本から販売する越境ECサービスの需要を狙い、日本でもアクティブに活動しているのでご存知の方が多いかもしれません。
インドネシアへの展開は2014年なので、やや後発のサービスと呼べるでしょう。しかしLazadaもShopeeと同じく、後発ながらユーザー数を伸ばしました。2023年序盤の現在では利用者数3位の位置まで来ています。
blibli
blibli.comはインドネシア最大のコングロマリットの一つであるDjarum Groupの支援を受けて設立されたサービスです。2011年に創業開始しているので、インドネシアのECモールとしては先発の部類に入ります。
B2CだけではなくB2B、B2B2C ( Business to Business to Customer )も展開している部分は特徴のサービスです。
国産のECサービスということもあり、BilBilは地場産業の活性化をテーマとした取り組みを展開しています。
例えば2022年には農作物の販売支援を展開するPT Mitratani Dua Tujuhと提携し、地場の農作物をblibli.comの多様なオムニチャネルを活用して販売する取り組みを開始しています。
Bukalapak
Bukalapakは2010年に設立されました。
Bukalapakは創業時よりインドネシア語でワルンと呼ばれるような「小規模の事業者」をサポートすることに注力してきた点が特徴でしょう。
ECプラットフォームとしてだけではなく、ワルンのデジタル化を促進するための取り組みも積極的に展開しています。
例えばMitra Bukalapak(日本語だとBukalapakパートナーズ)という仕組みを使うと銀行口座を持たない事業者でも、請求書による振り込みや資金の預け入れなど、ほぼ銀行と同じ機能を活用することができます。
2021年にインドネシア証券取引所に上場しています。