最終更新日 2025年12月8日
Contents
中国依存からの脱却、その受け皿としてのインドネシア市場
日中関係の悪化により、訪日中国人観光客の大幅な減少が懸念されています。実際に、中国からの訪日客に対する制限が続く中、日本の自治体や事業者の間では「中国市場への依存リスク」を強く意識する声が増えています。
こうした状況の中で、2026年には訪日プロモーション予算の一部がインドネシア市場に流れてくる可能性が高まっています。では、インドネシア市場は本当に中国市場の代替となりうるのか?そして、どのようなアプローチが必要なのか?
JAPASIANでは観光レップ事業を通じて、インドネシア現地の旅行代理店と直接的な情報交換を行っています。この記事では、そうした現場の声も交えながら、2026年以降のインドネシア訪日市場の展望について考察します。
この記事の位置づけ
訪日インドネシア人の詳細な統計データについては、JNTO(日本政府観光局)が定期的に公表しており、訪問者数の推移や属性などのミクロな情報はそちらで把握することができます。
この記事では、そうしたミクロなデータ分析ではなく、もう少しマクロな視点でインドネシア市場全体を俯瞰したいと思います。また、数字だけでは見えてこない現場の声や市場の空気感も交えながら、2026年以降の展望を考えていきます。
データで見るインドネシア人の訪日人気は依然として堅調
まず、客観的なデータから見ていきましょう。複数の調査結果が、インドネシア人にとって日本が引き続き人気の旅行先であることを示しています。
SiteMinderが発表したChanging Traveller Report 2026によると、インドネシア人観光客にとって日本は2026年の海外旅行先として最も人気があり、45%が選択しています。また、Klook Travelの調査でも、2025年を通じて日本がインドネシア人観光客に最も選ばれた目的地であることが確認されています。
実際の訪日者数も増加傾向にあります。2025年1月から7月の期間で、日本を訪れたインドネシア人観光客は373,600人に達し、インドネシアは日本への訪問者数で11位となりました。民間旅行会社Dwidayatourでは、日本向けツアーパッケージの需要が前年比24%増加しているとの報告もあります。
数字だけを見れば、「日本人気は続いている」と結論づけることができるでしょう。
しかし、インドネシア市場の構造変化が起きている
ただし、JAPASIANが観光レップ事業を通じて現地の旅行代理店から聞く声は、必ずしも楽観的なものばかりではありません。2025年を通じて、以下のような市場の変化が見えてきています。
価格重視層は中国へシフト
インドネシア市場では、廉価な中国旅行のツアーパッケージが登場しており、価格を最優先する層は日本よりも中国を選ぶ傾向が強まっています。価格競争という点では、日本が中国に勝つことは現実的ではありません。
競合は近隣アジアから欧州へ
さらに注目すべきは、日本旅行の競合相手が変化していることです。以前は韓国や台湾といった近隣アジアが競合でしたが、日本のホテル代が高騰した結果、「同じ予算なら欧州旅行」という選択肢が現実味を帯びてきています。
また、台湾ではハラル対応が着実に進んでおり、ムスリムが多数を占めるインドネシア市場において、台湾の競争力が高まっているという側面もあります。
それでも日本を選ぶ層とは?
こうした状況を踏まえると、2026年以降にインドネシア市場で訪日プロモーションを成功させるためには、明確なターゲット設定が必要です。
価格だけで選ぶ層ではなく、「体験価値」を重視する層。文化と伝統の魅力、近代的な観光施設、本格的な料理体験、ユニークなアトラクション、フェスティバルなどの体験を求める、高付加価値を理解できる中間層から富裕層が主なターゲットとなるでしょう。
ただし、ここで重要なのは、インドネシア人が「値段にシビア」であることは変わらないという点です。求められるのは単なる「高付加価値」ではなく、「高付加価値×コストパフォーマンス」の両立なのです。
2026年以降の展望:訪日中国人減少が追い風になる可能性
興味深いことに、訪日中国人観光客の減少は、インドネシア市場にとってむしろ追い風となる可能性があります。
中国人観光客の減少により、日本国内のホテル需給が緩和され、価格高騰が多少落ち着くかもしれません。コロナ前のような価格水準まで戻ることは考えにくいものの、欧州旅行との価格差が縮まれば、インドネシア人にとって日本旅行がより現実的な選択肢に戻る可能性があります。
つまり、中国市場の縮小は、インドネシア市場にとって「日本旅行の競争力が回復するチャンス」と捉えることもできるのです。
2026年以降のインドネシア向けプロモーション戦略
では、具体的にどのようなプロモーション戦略が有効なのでしょうか。
ターゲット層の明確化
繰り返しになりますが、価格重視層ではなく、高付加価値を理解できる層へのアプローチが基本となります。ただし、「コストパフォーマンスの良さ」は必須の訴求ポイントです。
効果的な訴求方法
「高いけど価値がある」という抽象的なメッセージではなく、「この価格でこの体験ができるのは日本だけ」という具体性が重要です。
具体的な体験内容とその価格をセットで見せること。そして、台湾・韓国・中国との明確な差別化ポイントを示すこと。これらが、値段にシビアなインドネシア人消費者を納得させる鍵となります。
インドネシア市場特有のプロモーション構造を理解する
ここで重要なのが、インドネシア市場における旅行商品の流通構造です。JAPASIANが観光レップとして現地の旅行会社と接している中で見えてきた実態をお伝えします。
インドネシアではFIT(個人旅行)が主流であり、旅行会社自身も「個人消費者相手の商売は、チケットの手配くらい」と話すほどです。一部の旅行初心者を除き、個人旅行者はツアーをほぼ利用しません。パッケージツアーで売れるものは、ゴールデンルートや冬の北海道スキー旅行など、選択肢が限られています。
つまり、個人消費者に対しては、旅行会社を経由したプロモーションの効果は限定的なのです。
一方で、「報奨旅行」や「MICE」の領域では引き続き旅行会社との連携が重要となります。企業や団体の旅行では、旅行会社が手配から実施まで担うため、BtoB的なアプローチが有効です。
個人消費者向けは「自ら発信」が鉄則
では、個人消費者に対してはどうすべきか。答えは明確です。自治体や事業者自らが情報発信を行い、インフルエンサーを活用することです。
旅行会社は、個人からの「相談」や「問い合わせ」があって初めて動きます。つまり、消費者がすでに興味を持っている状態でなければ、旅行会社経由での販売は発生しません。
ゴールデンルートのように、すでに多かれ少なかれ旅行客が訪れているエリアは別です。しかし、それ以外の自治体や企業においては、まず自らの情報発信(インフルエンサーの巻き込みも含む)によって認知を獲得し、興味を喚起することが最優先事項となります。
具体的なプロモーション施策
以上を踏まえると、インドネシア市場における効果的なプロモーション施策は以下のようになります。
個人消費者向け(FIT)
インドネシアの消費者、特に旅行をテーマにした情報発信において、「自らの情報発信」とはほぼSNSを通じた発信を意味します。
高付加価値に反応しやすい層を狙うなら、現時点ではInstagramが最も効果的です。ビジュアル重視で、体験価値を伝えやすいプラットフォームとして、インドネシアの中間層〜富裕層に広く利用されています。
一方、TikTokも勢いがあり、将来を見越すなら両方に取り組むべきでしょう。確かに、Instagramユーザーと比較してTikTokユーザーは年齢層が若く、現時点では購買力に欠けると言われます。しかし、状況は数年で変わる可能性が十分にあります。ユーザー自身が年齢を重ね購買力が上がることもあれば、TikTok自体のユーザー層が変化することも考えられます。そうなればTikTokのフォロワーも大きな資産となります。
したがって、具体的な施策としては以下が挙げられます。
- InstagramとTikTokでの継続的な情報発信(特にInstagramは必須)
- Japanese Stationのような現地メディアでの記事掲載
- インドネシア人インフルエンサーを活用した体験価値の可視化
- 現地の旅行関連コミュニティへの参加と情報提供
法人・団体向け(MICE・報奨旅行)
- 旅行会社への定期的な情報提供と関係構築
- FAMツアーの実施
- 企業の人事・総務部門へのアプローチ
このように、ターゲットによってアプローチを明確に分けることが重要です。
まとめ
インドネシア市場は数字の上では「堅調」ですが、その中身は確実に変化しています。価格競争から体験価値競争へのシフトが進んでおり、訪日プロモーションの戦略も変化への対応が必要です。
訪日中国人の減少は、インドネシア市場にとって新たなチャンスとなりうる一方で、適切なターゲット設定とコストパフォーマンスの訴求ができなければ、その機会を活かすことはできません。
JAPASIANでは、観光レップ事業を通じてインドネシア現地の旅行代理店と直接連携し、こうした市場変化を常に把握しています。Japanese Stationでの情報発信、インフルエンサーマーケティング、マーケティングリサーチなど、現地に根ざした総合的なソリューションで、貴社のインドネシア向け訪日プロモーションをサポートします。
インドネシア市場での訪日プロモーションをご検討の際は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
参考ソース
- Suara.com「Tiga Negara Jadi Destinasi Liburan Favorit Warga Indonesia di 2025, Jepang Masih Nomor Satu」
https://www.suara.com/lifestyle/2025/11/23/173104/tiga-negara-jadi-destinasi-liburan-favorit-warga-indonesia-di-2025-jepang-masih-nomor-satu - Marketeers「Jepang Jadi Favorit, Minat Wisatawan Indonesia ke Luar Negeri Diprediksi Melonjak di 2026」
https://www.marketeers.com/jepang-jadi-favorit-minat-wisatawan-indonesia-ke-luar-negeri-diprediksi-melonjak-di-2026/
















