インドネシアという国は様々な切り方ができますが、最も代表的な切り方の一つが「宗教」でしょう。
世界第4位(2023年時点)の人口の中には様々な宗教を信仰する人々がいます。
この記事では記事執筆時点で最新の統計情報を元に、インドネシアと宗教についてデータをまとめています。また現地の知見を元にマーケティング視点での考察も加えています。
【この記事でわかること】
- インドネシアと宗教の関り
- インドネシアの宗教別人口分布
- 事業展開において宗教の視点で注意すべきこと
Contents
インドネシアと宗教
日本で生活していると宗教を意識することは稀かもしれませんが、インドネシアでは切っても切り離すことはできません。
インドネシア国民は生まれた時に必ずいずれかの宗教に属さねばならない、と法律で決められています。
2023年記事執筆時点ではIDカードにも「宗教」を記載する欄があります。
インドネシアではパンチャシラ(建国5原則)で「唯一神への信仰」が求められており、現在以下の6つの宗教が公認されています。
- イスラム教
- プロテスタント
- カトリック
- ヒンドゥー教
- 仏教
- 儒教
上記以外にも地域によっては「精霊信仰」などを行っている少数派もいますが、それらは「信仰」として「宗教」とは分けて考えられています。
インドネシアで生活していると、「婚姻」「食事」「学校」「行事」「祝日」などの様々な面で宗教による影響を受けることになります。
インドネシアの宗教別人口
2022年にインドネシア政府(Kementerian Dalam Negeri)が発表した統計によれば宗教別の人口は以下の通りです(※)。
参考記事:Mayoritas Penduduk Indonesia Beragama Islam pada 2022(data indonesia)
※表は記事内のデータを元に当社で作成
宗教 | 総数 | 対人口比率 |
イスラム教 | 241,699,189 | 87.02% |
プロテスタント(キリスト教) | 20,647,769 | 7.43% |
カトリック(キリスト教) | 8,501,472 | 3.06% |
ヒンドゥー教 | 4,692,548 | 1.69% |
仏教 | 2,016,564 | 0.73% |
その他の宗教 | 117,412 | 0.04% |
儒教 | 74,899 | 0.03% |
全合計 | 277,749,853 | 100.00% |
世界最大のムスリムを抱える国だがイスラム教が国教ではない
既出の表を見てわかるとおり、インドネシアではイスラム教徒が大多数を占めます。
全人口の87.02%であり、数に直すと約2.4億人のイスラム教徒が生活をしていることになります。
この数は「一国」としては最大であり、インドネシアは「世界最大数のイスラム教徒が生活する国」ということになります。
しかし注意すべきことは「インドネシアはイスラム教国(イスラム教が国教であり、イスラム法によって統治される国)ではない」という点です。
先に記載したとおり、インドネシアでは6つの宗教が認められており、どれを信仰するかは個人の自由です。
また個人が宗教を変更することも可能です。実際にインドネシアでは「結婚のために配偶者に合わせて宗教を変更する」こともあります。
キリスト教徒だけで約2,900万人、エリアによっては他宗教が強い場所も
宗教別比率を見ると、イスラム教徒の次に多いのがプロテスタントとカトリックです。
プロテスタントは全人口の7.43%で約2,060万人、
クリスチャンは全人口の3.06%で約850万人、
となっています。
彼らは宗派こそ違いますがともにキリスト教徒であり、キリスト教として換算すると人口の約10.5%程度、実に約2,900万人のキリスト教徒が国内で生活していることになります。
この数はカンボジア(人口約1,600万人)やラオス(人口約750万人)を足した数よりもまだ多く、マレーシアの全人口(約3,300万人)に匹敵します。
また、インドネシアの面白いところは、エリアによって宗教の比率が逆転することです。
例えばNTTと呼ばれるNusa Tenggara TimurやPapuaの方へ行くとキリスト教徒が半数以上を占めるようになります。
キリスト教以外ではヒンドゥー教もバラつきが顕著です。
統計ではインドネシアには約470万人のヒンドゥー教徒がおり、これは全人口のわずか1.69%でしかありません。
ところがヒンドゥー教徒の多くはバリで生活しており、バリに行けばヒンドゥー教徒は一気に多数派となります(バリ在住者の9割近くがヒンドゥー教徒)。
イスラム教を念頭に置くことは重要
インドネシアはイスラム教国ではありませんが、やはり大多数を占めるイスラム教徒を念頭におくことは求められます。
特に顕著なのは「宗教侮辱罪」への扱いです。
2017年のジャカルタ市長選挙では、現職候補だったキリスト教徒のバスキ・チャハヤ・プルナマ氏がスピーチでコーランについて触れるような発言を述べ、宗教侮辱罪で有罪。禁固刑2年の実刑を受けました。
2022年にはキリスト教徒のYoutuberがイスラム教徒を不快にさせる動画を投稿したとして、禁固刑10年の実刑判決を受けています。
宗教侮辱罪は原則的にすべての宗教に対して適応される罪ですが、実際はイスラム教に対する適応が多く、適応された時の罪も重たいものになりがちです。
過度に意識をしすぎる必要はありませんが、個人にしろ法人にしろ、宗教(特にイスラム教)に対しては常に敬意を持って接することが求められます。
事業や商材によってイスラム教を意識すべき濃度は変わる
簡単ではありますがインドネシアの宗教事情についてまとめました。
圧倒的にイスラム教徒が大多数を占める国ではありますが、場所によって大きく比率が変わるという側面もあるのでご注意ください。
また、ここでは細かく書きませんが、富の分布の視点で見るとインドネシアでは華僑系が強いと言われます。
華僑系にはクリスチャンや仏教徒が多くいます。逆に華僑でイスラム教の方は多くはありません。
このように考えると何を、どこで、どのように販売するのか?によってイスラム教を意識すべき濃度も変わってくるでしょう。
この複雑さがインドネシアの難しい部分でもあり、面白い部分でもあります。
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