2023年に入って以降、訪日観光客数は増加の一途をたどっています。

ところで、日本から見ると「日本は旅行先として人気なんだな…」と感じるかもしれませんが、相手国から見た場合はどうでしょうか?

本記事では「インドネシア×訪日」という軸で、「インドネシア国内から見た場合の訪日旅行の位置づけ」を探ってみます。

 

【この記事でわかること】

  • インドネシアからの訪日外客数
  • インドネシアでの海外渡航先としての日本の位置づけ
  • インドネシア人の訪日観光における課題

 

インドネシアからの訪日外客数はどれくらい?

JNTO発表の訪日外客統計によれば、2023年3月のインドネシアからの訪日数は33,200人となっています。

コロナ前の2019年3月の数値が39,609人でしたので、2019年を基準とした場合は概ね100%近くまで戻ってきたと言えるでしょう。

ちなみに2019年通年でのインドネシアからの訪日外客数は412,779人でした。

2019年を振り返ると、東南アジアでは唯一タイが年間100万人以上(1,318,977人)の訪日外客数を記録。

その後をシンガポール、マレーシア、インドネシア、マレーシア、フィリピン、ベトナムが約40~60万人の間で追っている、という構図でした。

 

2023年はまだ前半戦の最中であり、これから東南アジア各国がどのような動きを見せるかは注目すべき点です。

 

インドネシアの中で日本は旅行先として人気?

結論からお伝えすると現在のインドネシアにおいて日本は「人気旅行先」と言っても過言ではないでしょう。

首都であるジャカルタで生活していると、「今度日本に行く」という方に出会うことも珍しくはありません。

とはいえ、見聞きする情報だけでは客観性が低いのでいくつか参考情報を示します。

 

2016年時点で日本は海外渡航先として8位だった

こちらの表は過去にJNTOのデータを元に当社で作成した「インドネシアからの訪問先推移(2011-2016)」です。

2016年の時点で、インドネシアからのアウトバウンドランキングは以下の通りでした。

ランキング 渡航先 渡航人数
1 マレーシア 3,049,964
2 シンガポール 2,893,646
3 サウジアラビア 941,138
4 中国 N/A
5 タイ N/A
6 香港 362,735
7 韓国 295,461
8 日本 271,014

隣国のマレーシアとシンガポールが常に旅行先として人気。

その後はイスラム教の聖地メッカがあるサウジアラビアが続く。

その後をアジア・東南アジア勢が追う、という構図でした。

 

蛇足ですが、シンガポールやマレーシアが人気なのは「隣国で渡航費が安い」という理由もありますが、この手のデータには出稼ぎ関連の渡航数も多く含まれると言われています。

またサウジアラビアが常に上位に含まれるのは、「ハッジ」や「ウムラ」と呼ばれる、イスラム教徒が多数を占めるインドネシアならではの理由による渡航が発生するためです。

 

詳細は以下の記事でご覧ください。

過去6か年で300%以上の増加?インドネシアでは訪日ブームが到来しつつある、と考えられる理由

 

2019年時点で日本は訪問先として7位

コロナ前の2019年の数値を見てみますしょう。

インドネシア統計局が発表したデータによれば、2019年通年でインドネシアからの海外渡航者は1169万人でした。

 

次のグラフは渡航先の内訳についてです。

 

パーセンテージ表記だと直感的にわかりにくいので、上記グラフを元と年間渡航者数を元に数字に直したのがこちらの表です。

ランキング 渡航先 全体に占める割合 渡航人数
1 マレーシア 35.46% 4,145,274
2 シンガポール 18.40% 2,150,960
3 サウジアラビア 12.54% 1,465,926
4 東ティモール 4.92% 575,148
5 中国 4.77% 557,613
6 タイ 4.26% 497,994
7 日本 3.31% 386,939
8 オーストラリア 1.94% 226,786
9 韓国 1.76% 205,744
10 香港 1.60% 187,040

マレーシア、シンガポール、そしてサウジアラビアの3強に変化はありませんが、4位以降に入れ替わりがあります。

日本は7位にまで上昇しています。

2019年の日本側の訪日外客把握数と多少 のずれはありますが、信ぴょう性のあるデータと判断して良いでしょう。

 

直近の渡航先ランキングは?

詳細な数値は公開されていませんが、GlobalDataのTravel & Tourism in Indonesia reportによれば、2022年のインドネシアからの渡航先ランキングは以下の通りです(参考記事の公開範囲を元に、当社にて表を作成)。

【参考記事】Top ten outbound destinations from Indonesia

 

ランキング 渡航先 渡航者数
1 サウジアラビア 1,116,600
2 マレーシア 1,041,000
3 シンガポール 非公開
4 タイ 非公開
5 トルコ 非公開
6 日本 非公開
7 アメリカ 非公開
8 オーストラリア 非公開
9 韓国 非公開
10 中国 非公開

有料レポートなので一部の数値は公開されていませんが、日本は6位だったようです。

トルコが5位に食い込んでいるのは当時トルコリラ安があり、旅行先としてブームになったことが理由です。

 

さらに、最新の2023年3月のニュースでは、2月に行われた旅行博「ASTINDO Travel Fair 2023」にて「日本と西欧の需要が高かった」と報告されています。

【参考ページ】Indonesia outbound travel bookings continue to surge

 

訪日数増加の鍵はeパスポートの普及?

インドネシアは日本の制定する「ビザ免除措置」の対象国です。

【参考ページ】インドネシア国民に対するIC旅券事前登録制によるビザ免除(外務省)

 

具体的には、事前にインドネシア国内の管轄でIC旅券の登録を行えば、3年又は旅券の有効期間満了日まで「15日間の滞在」を何度でもできるようになる、というものです。

初回に手続きが必要なものの、一度手続きをすればその後は入国しやすくなります。

一方、インドネシアではまだeパスポートの普及がそこまで進んでおらず、この仕組みの対象者の数自体が多くはないという課題もあるでしょう。

蛇足ですが本記事を執筆している2023年5月時点では、インドネシア人がパスポートを作る際に通常パスポートとeパスポートの2択から選べます。

 

現在のインドネシアにおけるパスポート発行の公式料金は以下の通りです。

  • 通常パスポート 350,000ルピア
  • eパスポート 650,000ルピア

 

【参考ページ】:Cara Membuat Paspor Sehari Jadi, Siapkan Biaya Minimal Rp 1,35 juta

 

倍近く料金が変わると、通常パスポートを選んでしまう人も少なくはないかもしれません。

蛇足ですがさらに1,000,000ルピアを払うと、「即日発行」のサービスを受けられます。

エクスプレス料金が準備されているのはなんともインドネシアらしい部分です。

 

まとめ

こうしてデータを並べてみると、「日本はインドネシアにおいて旅行先として人気である」と客観的にも言うことができそうです。

インドネシアの人口は約2.7億人で世界第4位です。インドネシア中央統計局によれば2045年には約3.2億人にまで増えると予想されています。

現在はまだ限られた人しか海外を訪れることができませんが、今後経済成長していくにつれアウトバウンドの全体数もまだまだ伸びていくでしょう。

当社では訪日インバウンドプロモーションのサポートも行っています。今のうちに先手を打っておきたいという企業、自治体の皆様からのご相談をいつでもお待ちしています。

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人が移動できる世界が戻りつつあり、観光業は活気を取り戻しています。当社のブログでも訪日インバウンド市場の発展に役立つような情報を積極的に発信していきます。

今回は「ムスリム(※1)対応」、特に「飲食店のハラル対応」について書きたいと思います。

 

以下のような背景があります。

先月(2023年2月)にジャカルタで久しぶりにJFT(Japan Travel Fair)が開催されました。当社も某市のサポートとして入らせていただき、多くのインドネシア人観光客や旅行代理店の方々と話す機会がありました。

中でもムスリムの方々やムスリム専門の旅行代理店と話した内容の学びが深かったので、発信していきたいと思った…という次第です。

タイトルに「インドネシア編」と書いたのは国によって多少考え方のバラつきがあるからです。インドネシアのムスリムは完全なイスラム教国の他国と比べて「寛容(※2)」と言われることが多いです。それでも共通する部分、参考になる部分はあるでしょう。

 

それでは本題に進みましょう。

 

※1:イスラム教徒の総称です。

※2:ここでは「敬虔・厳格」の反対の意味です。

 

ハラルである、とはどういうことか?

画像引用:pixabay

訪日インバウンド×ムスリム、となった場合に一番に上がるテーマは「食のハラル」でしょう。そもそも食に関して「ハラルである」とはどういうことなのでしょう?

一般的には「酒を使ってない」や「豚を使ってない」と言われることが多いですよね。実際はもっと細かい規定がありますが、ここでは触れません。

 

それでは「ハラルか否かの判断」はどうすれば良いのでしょう?

ムスリムの方に「これ(この店)はハラルですか?」と聞かれた時にどのように判断するのか?

 

この問いに対する答えは一つで「ハラル認証があるかないか」です。

ハラル認証がないレストランや食べ物に対して、私たち外国人が勝手に判断するのは危険です。

と言いますのも、成分表を見ても細かい添加物の内容判断は外部からはできません。

さらにその商品自体が成分的にハラルだったとしても、同じ調理場や工場でハラム(ハラルではないもの)なものを製造・調理していればアウトです。

また、肉を使用する場合は、そもそも使用される肉がハラル肉(ムスリムによるムスリムのやり方に則って処理された肉)でなければハラルとは言えません。

 

上記の理由より、個人的に「大丈夫、これはハラルだよ」と言い切ってしまうことはできませんし、してはいけません。

 

ムスリムを呼び込むためには飲食店のハラル認証が必要なのか?

画像引用:Unsplash

それではムスリム観光客の対応をするために、飲食店は「ハラル認証」を取得する必要があるのでしょうか?

 

これは「YES」とも「NO」とも言い難い質問です。

 

ただ「ハラル認証がないとインドネシアのムスリムは来てくれないのか?」という質問に対しては明確に「NO」と言えます。

 

少し補足します。

 

大前提として「ハラル認証」を取得した飲食店の選択肢が多いに越したことはありません。認証(※3)がついていればムスリム側は安心して食べることができます。

しかし現実的に多くの飲食店がハラル認証を取得するのは難しいでしょう。

店舗がハラル認証を取得するためには、店舗単位でムスリム向けに仕様変更する必要があります。

レシピにメニューに食材、キッチンまですべてを変えなければなりません。費用も時間もかかりますし、今いる日本の顧客が離れてしまう可能性もあります。

そこで知っておきたいのがムスリムフレンドリーモダンムスリムについてです。

 

※3:「ハラル認証の種類」についてよく聞かれますが、ことインドネシアについてはどこのハラル認証でもあまり気にしません。この辺りはまた別の機会に触れたいと思います。

 

 

ムスリムフレンドリーという考え方

画像引用:Pixabay

「ムスリムフレンドリー」という言葉はコロナ前から日本でも使われるようになりました。簡単に言うと「ハラル認証はないが、可能な範囲でムスリムの方々に配慮した対応を取り、適格に情報を開示する」ことです。

ムスリムの中には「ハラル認証付きのものしか食べない」という方もいれば、「認証が必ずしもなくとも、ある程度は自分で判断して食べる」という方もいます。

後者のムスリムの方は主に以下のような点を気にします(特に多い項目をピックアップします)。

 

  • 食べたいメニューのレシピ自体に豚やラードが入っていないか
  • 食べたいメニューのレシピ自体に味醂や酒などアルコール由来の調味料を使っていないか
  • 食卓におかれている醤油はハラル醤油(アルコールなし)か
  • 食べたいメニュー以外のメニューで豚やアルコールを使用しているか
  • 調理場や調理道具はノンハラルと分けられているか

 

ムスリムフレンドリーにしたからといって、すべてのムスリムに受け入れてもらえるわけではありません。

またムスリムフレンドリーを受け入れる方々の中でも厳格さにはバラつきがありますから、個人によっては「この場合はOK」、「この場合はNG」と分かれます。

それでもムスリムフレンドリーのお店が増えることにより、一部のムスリムがその土地に訪れやすくなることは間違いではないでしょう。

 

 

モダンムスリム

画像引用:pixabay

もう一つ知っておきたいのは「モダンムスリム(インドネシア語だとMuslim Modern/ムスリムモデレンと発音)」という考え方です。

学術的な言葉の定義に踏み込むと非常に深い話になります。ここでは「イスラム教義に沿いながらも、比較的柔軟に様々なことを楽しみたいと考えている人達」程度で捉えておいてください。

先日のJTF期間に我々が訪問してきた旅行代理店も、ムスリムの中でもモダンムスリムと呼ばれるお客様を中心に扱っている会社です。

厳格なムスリムを相手にする旅行会社では、完璧なハラルツアーしか扱っていません。ハラル認証のあるお店だけを訪れ、さらに礼拝の時間も完璧にツアーの中に組み込まれて…という具合です。

今回訪れた旅行会社ではツアー構成がもう少し柔軟に組まれています。レストランはムスリムフレンドリーのお店、礼拝は一日一回はきちんとしたモスクを訪れるがそれ以外は組み込まない(参加者個人にゆだねる)、などが異なります。

彼らは日本に対する理解も深く、彼らの中で明確にこれはOK、これはNG、という判断基準がありました。この辺りはまた別の機会にまとめたいと思います。

 

最後に

理想ばかり追いかけても現実が動かないことは多々あります。

訪日インバウンドにおいては完全で完璧なムスリム対応(=ハラル対応)が理想ですが、日本の状況を考えると現実的には難しいでしょう。

ただ、放置もできません。経済成長著しい東南アジアには、インドネシアやマレーシアといったムスリムが多い国も含まれています。世界的にもムスリム人口は増加しており、2050年には世界人口の3分の1がムスリムになるとも言われています。

そこで重要になるのがムスリムフレンドリーという考え方です。この領域はなかなか厳密に定義できるものではありません。それゆえに教科書もありません。

教科書がない世界だからこそ現場の声を聞きながら作るのが重要です。

またその際は日本にいるムスリムだけではなく、実際のターゲットとなる現地ムスリムの声を聞くことが肝要です。

特に「どうすれば的確に伝わるのか?」という部分は現地に住んでいないとわからない点でしょう。

 

当社ではムスリムに対するプロモーションや調査のサポートが可能です。

また現地ムスリムのメンバーを交えた「ムスリム対応に関するオンラインプロジェクトチーム」の発足なども可能です。

ご利用の際はお気軽にご相談ください。

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神戸市の観光プロモーションを展開されている一般財団法人神戸観光局様よりご相談をいただき、JAPANESE STATIONを活用した神戸市のオンライン訪日プロモーションを展開しました。

 

実施目的

実施時期は訪日観光客の受け入れ開始前でしたが、来るべき訪日観光客受け入れ再会に向けた準備としてのプロモーションを展開しました。

神戸市の情報を現地語で発信し、情報源となる魅力的な定常コンテンツを設置することを目的としました。

 

実施内容

大きく3つの取り組みに分けて支援させていただきました。

  1. 神戸市の紹介記事の制作・配信
  2. 神戸市より観光体験ライブストリーミングの実施
  3. ライブストリーミングの内容を定常動画コンテンツとして設置

 

①神戸市の紹介記事の制作・配信

神戸市観光のポイントを伝える記事を作成し、Japanese Station内で公開しました。

神戸市の魅力を知るための入り口として機能しており、記事公開後も月あたり数千人単位で閲覧されています。

【記事】5 Kegiatan yang Bikin Kamu Ingin Wisata ke Kobe!

 

②神戸市より観光体験ライブストリーミングの実施

記事広告で興味を持った方々へより深い情報を伝えるために、ライブストリーミング配信を実施しました。

一方的な動画ではなく、ライブストリーミングの形式をとることで「オンライン観光体験」をしてもらいたいという狙いもありました。

ライブストリーミングはJapanese Stationのインスタグラムアカウントを通じて配信。述べ約2,000人の視聴者が集まり、約2,500のコメントが寄せられるなど、大きな盛り上がりを見せました。

 

③ライブストリーミングの内容を定常動画コンテンツとして設置

ライブストリーミング動画はJapanese Stationのインスタグラム動画コンテンツとして格納しました。

また、先述した「記事広告」の中に埋め込むことで「神戸に興味を持った人へ、映像でより多くの情報を伝える」役割を担っています。

インスタグラム動画は公開後、約3か月(2022年6月時点)で合計2万回以上再生されており、神戸観光の情報源として機能していることがうかがえます。

映像は下記よりご覧いただけます。

 

 

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コロナウイルスの広がりにより、世界中で経済的な悪影響が示唆されています。

日本では特に観光業で受ける影響が大きく、国連によれば2020年1〜3月までの3ヶ月で日本の観光産業は1400億円程度の経済的損失が見込まれるとのことです。

【参考】日本の観光産業 約1400億円の損失と予測 国連の専門機関(NHK NEWS WEB)

 

中国からの観光客激減が日本以外の国々に与える影響も甚大で、日本だけではなくタイやベトナムなどでも観光産業が大打撃を受けそうです。

【参考】観光部門の損害額は77億USDも、新型コロナ感染拡大で(VIET JO)

【参考】新型肺炎 東南アジア苦境 タイ観光地、収入痛手(東京新聞)

 

今後ウイルスがさらに蔓延することで、中国人だけではなく世界的に旅行客が低減していく可能性もあるでしょう。

そのため『世界的に観光客激減』という流れはもはや避けられないのかもしれません。

ただ、現時点で強く東アジア(主として中国語圏)依存からの脱却…別の言い方をすれば『売上構成比率』を考える必要性を感じましたのでまとめておきます。

 

企業向けのB2Bビジネスでは一社依存はリスクと見なされる

本題に入る前に少しB2Bについて触れます。

B2B(Business to Business)とは消費者相手の商売ではなく、事業者同士での商売のことです。

B2Bでは消費者向けの商売以上に顧客一社一社との関係性が重要になり、取引期間が長期になる場合も多いです。また取扱高も大きくなる傾向にあります。

そのため大手企業一社の売上高比率が高くなることも珍しくありません。

 

ただ、B2Bの領域では売上高が一社に依存してしまう状況は「リスク」と見なします。

『一社への依存度は〇〇%まで下げるべき』という数値は業種や企業規模、その会社の方針によって異なるでしょうが、売上構成比の1/3以上を一社が占める状況を健全と考える企業はほとんどないでしょう。

 

変化の激しいこの時代では、特に売り上げ比率分散を重視する傾向が強まっているようにも感じます。

 

韓国や中国が示した、インバウンドとB2Bの共通項

日本のインバウンド市場に話を戻します。

下記はJNTOの推計値を元に、2019年1月~12月の入国者数を国別比率でグラフ化したものです。

入国者数を見ると中国の構成比が30%超あります。

以降4位までは韓国、台湾、香港、と東アジア勢だけで実に70.1%を構成しています。

 

次に消費額を見てみましょう。

消費額においては中国が36.8%を締めています。こちらも4位までは東アジア勢が占有しており、全体消費額の64.2%を構成しています。

あらためて眺めてみると、実に訪日市場の3割超を中国一国に、約7割を東アジアだけに依存していることがわかります。

そして昨今のコロナウィルスによる大打撃…。

法人取引でいえば『大得意様』の中国からの観光客が激減したことで、厳しい状況に置かれている観光関連業の方も少なくないでしょう。

観光業は個人が相手になることが多いのでなかなか見えにくいのですが、一国(≒一顧客)への依存がリスクとなることはB2Bと同じように感じます。

 

東アジアだけではなく、他エリアへも分散を

中国の人口を考えるとまだまだ成長の余地があり、今後も日本にとって重要な訪日市場となることはほぼ間違いないでしょう。

ただ、今回のような想定外の状況が起こることも踏まえ、他国へリスクヘッジをしておくことも必要でしょう。

 

方針は大きく2つ考えられます。

 

1つは経済力のある欧米圏。特に米国が魅力的でしょう。

2019年には推計で172万人が米国より訪れていますが、総人口約3.3億人の規模感を考えるとまだ伸びしろがあります。

 

もう1つは東アジアの次に近く、経済成長が期待される東南アジア圏

物理的にも心理的にも日本との距離が近く、経済成長に伴い訪日客数の伸びが期待されます。

 

直近ではタイが130万人以上の訪日客数を記録しており、今後東アジアに続くマーケットとして期待されています。

その後はどこの国が伸びるかは未知数ですが、人口約2.7億人を誇るインドネシアが重要マーケットになる可能性は高いでしょう。

タイで刈り取りを行いつつ、ぜひインドネシアへの種まきもご検討ください。

ソーシャルメディアでの情報発信などは比較的簡単に実施できるので、早期から着手しておいてもよいでしょう。

その際はお気軽に当社へご相談ください。

訪日インバウンド向けサービス一覧

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インドネシアに携わっていると「ムスリム対応」関連のお話を聞くことが増えます。

宗教にはあまり馴染みのない日本ではありますが、さすがにここに来てムスリム対応に力を入れる自治体やレストランが増えてきたかなと感じます。

しかしどのようなサービスでも同じですが、準備しただけではお金は生まれません。

特に観光誘致するためには、知ってもらい、魅力を伝え、理解してもらい、訪れてもらうことが必要です。

とは言え世界は広い…

どこに向けて情報発信すればよいのだろう?

とお悩みの企業様には、手前みそではありますがインドネシアへの情報発信をおすすめします。

 

世界で増加するムスリム人口

ムスリム人口は増加傾向にあり、2017年時点での世界のムスリム人口は18億1396万人と世界人口の24.0%を占めています(引用:世界と日本のムスリム人口 2018年、店田廣文)。

米国の調査機関ピュー・リサーチ・センターによれば、2070年ごろにはムスリムの数がキリスト教徒の数を抜き、世界最大の教徒を持つ宗教となるようです(引用:日経新聞記事)。

イスラム教では様々な戒律が存在しており、教義自体が生活のあり方に大きな影響を与えています。

最も有名なものは食事でしょう。

一言にすると「イスラム教の教えに則る食べ物」を「ハラル(アラビア語で許されているもの、許可されているものという意味)」と呼び、ムスリムはハラルのものしか口にしてはならないとされています。

逆にハラルではない食事は「ハラム(アラビア語で許されていないもの、許可されていないものという意味)」と呼ばれます。

このようなムスリムならではの教えに沿ったサービスや製品を提供する、ムスリム市場が形成されており、今後拡大していくと予想されています。

ムスリムを対象とした海外旅行市場も成長しており、訪日ラボの記事よれば2026年には 3,000億米ドル(日本円で約33兆6,000億円)にまで成長するとされています(引用:訪日ラボ記事)。

また日本を訪れるムスリムの数も増加傾向にあり、2016年時点で70万人だった訪日ムスリムの数は2020年には140万人が訪れると予想されています。

このような背景があり、少しずつではありますが日本でもムスリム対応を開始する自治体や企業が増えているのでしょう。

 

インドネシアはムスリム向けPRの足掛かりとして理想的

記事冒頭でも書いた通り、準備をしただけでは意味がありません。

自然に訪れてくれる方もいるかもしれませんが、準備したサービスを存分に活かすためにはアピールしていくことも必要です。

ムスリムは世界中に存在していますが、まずはインドネシア市場へのアプローチをおすすめします。

理由をお伝えします。

 

①世界最大数のムスリム人口を抱えている

現在インドネシアの人口は約2.7億人と言われており、世界第4位の人口を抱えています。

そのうちの約87%がムスリムであり、単純計算で約2.34億人のムスリムが生活していることになります。

仮に世界のムスリム人口を18億人とすると、インドネシアだけでムスリム全体の約13%を占めることになります。

この数は世界最大であり「世界最大のムスリム人口を抱える国」となっています。

 

②比較的寛容度が高い

この場で詳細を語ることは避けますが、いくつかの国ではムスリムの保守化が進んでいると言われています。

実のところ、インドネシアでもムスリムの保守化が進んでいます。

ただ、6つの宗教が国で公認されており、カレンダーには各宗教の重要な日が祝日となっているインドネシア…。

「インドネシア人」として一色で語れるものではありませんが、比較的柔軟な考え方を持つ人たちも少なくありません。

特にジャカルタのような大都市圏の方々、さらに海外旅行に行ける裕福な層ではその傾向が強いでしょう。

 

③日本から近く、直行便もある

インドネシアはマレーシアとならび、ムスリムが多い国としては日本と距離が近い国の一つです。

そのため、富裕層だけではなく中間層でも日本を訪れることができます。

また、インドネシア(ジャカルタのスカルノハッタ空港とバリのデンパサール空港)と日本(羽田空港、成田空港、関西国際空港)の間には直行便が定期運航しています。

 

インドネシアの巨大人口をムスリム対応の足掛かりに

上述のように、インドネシアには「ムスリム対応の足掛かり」となる条件が揃っています。

マレーシアからも多くの観光客が日本を訪れていますが、人口規模を見るとインドネシアはマレーシアの8倍。

ムスリム向けのPRを開始する際にはぜひインドネシアへのアプローチをご検討ください。

当社ではインドネシアのムスリムをターゲットとしたPRのサポートも可能です。

ご入用の際はお気軽にお声がけください。

ムスリム向けPR

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前回のブログでは「訪日インバウンド」をテーマとした際のインドネシアの可能性についてデータを整理しながら考えてみました。

[blogcard url=”https://www.japasian-ltd.com/blog/1007”]

結論としては、インドネシア国内での人気旅行先ランキングで現在10位前後ではあるが今後の伸びしろはありそうだ、というところ。

今回は、「日本に来たいと思っている、もしくはすでに予定計画中のインドネシア人はどうやって情報を探しているのか」という点を考えてみます。

 

データを探してみる

まずはいつもの通りデータは無いかな……っと調べてみました。

いきなりありました。

日本交通公社さんが「訪日外国人旅行者の意向調査(2015)」というデータを発表しています。その中に、まさにドンピシャで「日本旅行をする前にどこで情報収集したか?」という調査項目がありました。

引用:2015年、日本交通公社、訪日外国人旅行者の意向調査

引用:2015年、日本交通公社、訪日外国人旅行者の意向調査

1回目と2回目に分かれていますが、イメージがしやすい1回目の旅行者に絞って見てみます。

一番左側の「全体」を眺めると「友人」「ガイドブック」「家族・親戚」がTOP3になっています。その後は「旅行会社のHP」や「観光局のHP」と続きます

インドネシアは一番右側です。「友人」「ガイドブック」「家族・親戚」のTOP3はインドネシアでも情報源として活用されているようです。「旅行会社のHP」や「観光局のHP」もかなり参照していますね。

ここまでは同じ傾向ですが、「ぽこっ」と飛び出しているのが「SNS」の項目です。「タイ」も同じく「SNS」が飛び出していますね。

以前「インドネシアのソーシャルメディア利用者数などのデータを整理してみた」の記事で書きましたが、インドネシアでのFacebook利用率は異常に高くなっています。

[blogcard url=”https://www.japasian-ltd.com/blog/975”]

タイもSNS利用率が高い国として挙げられることが多く、両国ともに日常での情報接点として重要な位置を占めているのでしょう。

うーん、しかしこのデータ、インドネシアだけ各回答のパーセンテージが異常に高くない?と思ってソースを見てみたら「インターネット調査」ですね。

ということは参考情報程度に留めていた方がよいかもしれません。インドネシア国内の調査だとネット調査というのは信憑性が低く、あまり歓迎されません。

[blogcard url=”https://www.japasian-ltd.com/blog/564”]

 

個人的な周囲の状況から考えてみる

残念ながら他に定量的なデータが無かったので周囲の状況から考えてみます。

私の周りにはアグレッシブに自分でお金を稼ぐプロフェッショナルなインドネシア人たちが多く、この2年間でも結構な数「旅行で日本を訪れるインドネシア人」と出会いました。

その都度「どこで情報集めているの?」なんて聞きまわっています(職業病ですね)。

 

訪日経験ありの友人知人は最重要情報源

まず間違いなく情報源として入るのが「すでに行ったことのある友人や知人」。仲の良い友人に限らず、少し遠縁の友人だったとしても伝手を探して聞きまわって情報を集めています。

ちなみに私はインドネシア人ではありませんが「日本人の話を聞きたがっているやつがいる」と紹介されて会ったことが数度あります。アグレッシブですよね。

 

信憑性はともあれ旅行の経験談ブログも情報源

私が会う時にはすでに情報収集を開始しており、ラフなスケジュールが決まっていることが多いです。

面白いのが、どこへ行くの?と聞くと「日本人の私でも知らないようなマニアックな商店街」が「ぽッ」と挙がってきたりします。

なんというのでしょう、例えるならば「新小岩ルミエール商店街」みたいなレベルです(何を隠そう私は一時期東京の新小岩に住んでいました)。

情報源を聞くと「インドネシア人でも日本の物価にめけずにお土産を買える場所」のようなタイトルのブログ記事(※)があり、「マニアックな商店街」やら「駅の中にある価格破壊系のアクセサリー屋」などが買い物スポットとして挙げられているそうです。

※特にこのブログが影響力がある、ということではなくこのような小さなブログを探し回っているようです。

その都度「そんなもの買ってもしょうがないでしょ!しかもきっとそのアイテムMade in China」なんて思ってしまうのですが、確かに渡航した後の滞在費は馬鹿にならないので彼らを理解する部分もあります。

 

訪日情報メディアは見てないの?

最近「日本の観光情報を外国語で発信するメディア」が増えており、インドネシア語で発信するメディアもいくつか出てきています(私が把握する限り8つはある)。

それら「訪日情報メディア」は見てないの?と聞いてみるとだいたい「知らない」と返答が来ます。また、知らないだけならまだしも「知ったとしても見ないんじゃない?」と言われることも少なくありません。

彼らが言うには、

  • 交通機関などの基本情報の参照には使うが旅程選定には使わない

なぜならば、

  • 企業が「ここがおススメ」と紹介する一次情報には価値がない
  • 同じインドネシア人が経験した「体験情報」にのみ価値がある
  • 宗教も文化も所得も違うのだから日本人がまとめた情報はあまり役に立たない

と考えているようです。

インドネシア人の声を集めた「地球の歩き方」的なものがあればよいのでしょうね。

 

情報源が精査されていくのはこれから

私が直接会うインドネシア人たちは所得もそこそこあり、情報の価値判断を自分でするインテリ層です。

彼・彼女たちは訪日メディアに対して少々冷ややかですが、「もう少し下の層が行くようになったら見る人も増えるかも」なんてことを言っている人もいました(自分達がエリートだってわかっているんですね、格差社会を感じます)。

中国であればすでに「訪日したい中国人にアプローチする方法」はある程度体系立っていますが、インドネシアはまだまだこれからなのでしょう。

接点の多いSNSで情報発信しながら今のうちに「知る人ぞ知る観光地」のようにブランドを作っていくのもありですし、リピーターを囲ってアンバサダーになってもらうのも有効そうです。

今回は触れていませんが「クーポン」で押すのも効くでしょう(情報は自分達で判断する!とか言っているインテリ層もクーポンにはものすごく弱い)。

インドネシア人向けに訪日で何か仕掛けていきたい場合は、まずは費用を抑えながら実験的に始めていく段階なのでしょう。

 

 

インドネシアへのプロモーションをお考えですか?

要件が固まる前の段階でもお気軽にご連絡ください。現地の知見を踏まえ、最適な方法を並走して一緒に考えさせていただきます。

最近中国からの訪日観光客による「爆買い」に陰りが見えてきたというニュースをよく見ます。

この流れを経て、ある種バブル気味だった中国寄りの訪日インバウンドブームが落ち着き、他国にも目を向けた包括的な観光立国の動きが進んでいくのでしょう。

東南アジアに関わる人間としては、中国の影になって目立たなかった東南アジアからの訪日客への注目が高まってくれるといいなと思っています。

しかし、かなりの量が揃っている中国人旅行客の情報と比較して東南アジアの情報はあまり目にする機会も無いでしょう。また、例のごとくインドネシアに関しては情報自体が存在していなかったりします。

日本とは異なりインドネシアの場合は統計局のデータが十分とは言えません。正確に述べると、政府の方針によって蓄積するデータがころころ変わります。

現在のインドネシア政府はインドネシアへ来る旅行客増加を重視しているので、インドネシアにとってのインバウンド情報は手に入りやすいのですが、インドネシアから外に出ていく人たちの情報は不足しています。

実際にジャカルタの中に住んでいると、「日本に行ってみたい」という声をたくさん聞きますし、ついつい「ポテンシャルはあるんじゃないですか?」と言いたくなります。

とはいえ客観的なデータが無いとなんとも説得力に欠けるので、私自身が納得感を得るためにも情報をかき集めてみました。

 

インドネシアから日本への訪日外客数(2016年時点)

まず考えるスタート地点として、「今どれくらいのインドネシア人が日本に来ているのか?」を見てみます。

こんな時は日本政府観光局(JNTO)。さすがの情報量で何でも出てきます。

最新の月次情報だと、国ごとの季節要因が入ってくるので通年で見てみましょう。

2015年の国別訪日外客数を引用します。

国別訪日客数(2015年)

年間総数約2,000万人のうち、中国500万人をはじめ、韓国、台湾あたりの隣国からの訪問客が多いことがわかります。

東南アジアだけに目を配ると、タイが伸率こそ低いものの約80万人で頭一つ出ている印象です。それ以下は20~30万人程度でほぼ横並びですね。

インドネシアは約20万人でやや後続、伸び率もまさに真ん中程度といった印象でしょうか。

このデータだけだと、インドネシアはまさに「凡庸」。次に注力するならタイかな!となりますね。

もう少し違った角度で見てみます。

 

東南アジア各国の訪日客数比率(vs人口)を比較してみた

先ほどのJNTOのデータを少し加工させていただきます。

訪日客数だけだと味気ないので、各国の人口と客数を並べて対人口比における「対人口訪日客数率」を出してみました。

各国総人口のうちどれくらいの人たちが日本に来たのか、という指標です。

実際はリピーターも含まれているので純粋な対人口比にはなりませんが、参考にはなるでしょう。

訪日客数の比率(対人口)

先ほどは東南アジアの中でタイだけ突出していると書きましたが、対人口比だとシンガポール(5.6%)が突出。その後、タイ(1.2%)、マレーシア(1.0%)が並び、残りはガクッと下がります。

東アジアの香港や台湾の数字は極端(地理的に近いのでリピーターも多いのでしょう)ですが、地理的条件が似ている同じ東南アジアのシンガポールと比べると、タイ含めた他国はまだまだ低い。

インドネシアはわずか0.1%となっています(少な!)。

ただ、仮に2.5億の巨大人口を抱えるインドネシアがこのまま成長し、昨年のタイと同じ1.2%になったらそれだけで300万人が来ることになります。フィリピンやベトナムも同じく1.2%になったと仮定して、両国の訪日外客数を合算したとしても190万人程度でありインドネシア一国分に満たないです。

巨大市場と言われる所以ですね。

少し特殊な国である先進国シンガポールまでいけなかったとしても、同じ途上国のタイで1.2%の実積があるならば、周辺諸国もその程度まで膨れる可能性は十分にあるでしょう。

いやー、それにしても中国とインドのポテンシャルは果てしないですね。中国は500万人近く来ているのに、対人口比0.4%程度のボリュームです。インドは小数点以下一桁以下でした(まだまだ縁遠い感じがしますよね)。

さて、話を戻しましょう。

今まとめたのはあくまで「なんとなくなポテンシャル」を並べた話です。次に気になるのは、「実際にポテンシャルを発揮しながら増えていくのか?」という点です。

 

インドネシアからの海外旅行客数が増加していく可能性は?

まず私が気になったのが「日本云々の前に、インドネシア人で海外旅行に行ける人ってどれくらいいるの?増えるの?」という点です。見込み客(海外行ける人)がいないと客(日本来てくれる人)なんて取れないですから。

つまり、インドネシアとしてのアウトバウンドデータ欲しい。ところが、例のごとく目ぼしいデータが無い!こういう時は欧米企業のリサーチデータです。マスターカードが2014年に発表した「The Future of Outbound Travel In Asia/Pacific」というレポートを見てみます。

各国のアウトバウンドフライト予測

国別にアウトバウンドトラベルがどれくらい増えていくのか?を予測したデータで、単位はMillionです。

これを見ると、2020年時点でインドネシアは年間1,060万。この数字はタイ(870万)やベトナム(640万)、フィリピン(620万)の近隣諸国を超え、インドネシアがシンガポール(1,180万)や香港(1,160万)と並ぶアウトバウンド中堅国になる可能性を示しています。その他、インドネシア以外にもマレーシアが台頭してくる可能性が高いですね。

ただ、インドネシアの数字はLPO(Leisure Purpose Trip)で、マレーシア含む他国はほぼAP(All Purpose Trip)となっています。AP内でLeisureが占める比率はわかりませんが、純粋な「観光目的の海外旅行者数」でいくと、近い将来インドネシアが東南アジアで1位になっていく可能性があるかもしれません。

1,000万人という数値も2.5億の人口を考えると少ない数字なので、その後も伸びていけば中国のように頭一つ飛び出た市場になる可能性は高いと考えています。

それでは、仮に海外旅行に行ける人が増えたとして、次に私が気になったのは「いったいその中でどれくらいの人が日本に来てくれる可能性があるのか?」ということです。

 

インドネシア国内で訪日観光人気は高まるのか?

自分でテーマ設定しておいてアレですが、これはかなりの難問ですね。

定性的には増えるんじゃない?という気がしていますが、まず定量データから探ってみます。

これまた体系的なデータが無いのですが、インドネシア語で気になる記事とデータを発見しました。

Korea, Tujuan Favorit Wisatawan Indonesia

「韓国がインドネシア人の旅行先として人気だよ」という記事。

記事自体の内容は置いておいて、気になったのは記事内に張ってあるこちらのデータです(引用します)

インドネシアにおける2014年の出国先データ

*Sumber:

Total Jumlah Wisatawan Outbond: Website resmi Kementrian Pariwisata Indonesia

Jumlah Wisatawan Outbond ke Setiap Negara: Website resmi Badan Pariwisata setiap Negara

とあるので、こちらのデータは「インドネシア観光省による、アウトバウンド旅行者数データ2014」です。

インドネシア観光省のWebでオリジナルデータを見つけることができませんでしたが、データを見ていきます。

表の読み方はシンプルで、Jumlahは総数、Tingkat pertumbuhany-o-yは成長率です。

合計数が約800万人。先ほどのマスタカードデータだと2014年の観光アウトバウンド数予測値が680万人になっていましたので、こちらのデータの数字はビジネストリップも含む数字なのでしょう(もしくは観光客だけのデータだけど予想以上に伸びた、という楽観的な捉え方ができなくもない)。

細かいところを見てみます。

まず、隣国のシンガポールが圧倒的に人気であることがわかります。

また、全体的に成長率が微減(-0.93%)の中でマレーシアと韓国がともにプラス10%以上成長しており伸びていたことがわかりますね。マレーシアは同じムスリムの国なので理解しやすいですが、日本と距離的にそこまで変わらない韓国が6位に入っており、韓国の強さがうかがえます。

そして、なんと日本は入っていないですね…。衝撃。圏外、ということなのでしょうか?

他にも2016年にJNTOが発表したデータがあったので見てみます。見やすいように少し加工して年次伸び率を追加しています。

アジア各国へのインドネシア人訪問者数

なんと、このデータはインドネシア側の保持データではなく、JNTOが各国の入国管理データを調べて作成されたそうです(お疲れ様です)。

2014年マレーシアの訪問者数が先ほどより50万ほど増えていますが伸び率はほぼ同じですし、他国データはほぼ一致しているので信憑性は高いでしょう。

このデータを見ると日本は「絶対数はまだ低いものの、年々客数を増やしている」様子がわかります。特に2012年あたりから伸びていますね。

2014年で約16万人。先ほどの「2014年インドネシア観光省によるデータ」に入れるのであれば10位のオーストラリアと競うレベル、つまり「次点」でもれたようですね。

他に特筆事項があるとすれば、2014年の伸び率でしょう。116%(+16%)成長なので、韓国(インドネシア側データによれば+10.1%)、マレーシア(本データだと+11%)を抜いて最も伸びた国ということになります。

日本の地理的条件を踏まえれば、今後このまま伸ばしていければ韓国と凌ぎを削って争奪戦をしていくことになるのでしょう。

ちなみに、2015年に日本に来たインドネシア人の数は205,083人で伸率+29.2%。仮にこの勢いを維持できれば2020年のオリンピックイヤーには73万人、現在から10年後の2026年には265万人が来ることになります(勢いが続けばですが)。

 

中に住んでいる視点での定性的な補足

インドネシアと言えば韓国人気が高く、韓国一人勝ちのような意見をお持ちの方もいるかもしれません。確かに韓国ドラマなどのエンタメ産業は強いです。ただ、実際に中に住んでいると旅行に関しては日本人気も強くなっていると感じます。

トラベルフェアでも韓国ブースはそっちのけで、日本ブースに人だかりができていることも多いです。最近の日本陣営の頑張りが短期的に効いているだけ、の可能性もありますがそれでも結果は結果なので私はポジティブに捉えています。

実際に周囲でも日本旅行に行くカップルや夫婦とよく出会います。先日も「家族旅行兼ハネムーンで日本に1週間滞在する、というムスリムカップルと出会いました(温泉探しを3時間かけて手伝ってあげましたw)。

現在のインドネシアで日本に行けるのは裕福な層に限られますが、そのすべてが「富裕層」かというとそうでもないです。イメージとしては新興のミドルアッパー層あたりで、大卒で専門職としてバリバリ働くホワイトカラーの若い一般人でもお金をためて年一旅行で日本に行ったりします。

インドネシア人にしたら航空券高すぎて買えないでしょ?と思われる方も多いかもしれませんが、「トラベルフェア」を上手に使えば激安チケットが手に入ります。

インドネシアは他東南アジア諸国と同じで、ツアー旅行ではなく個人で全部用意することが多い。まずはチケットだけイベントで掘り出し物を探し、それに合わせて休みを調整して休暇を作ります(そこは欧州の人みたいですよね)。ちなみに、トラベルフェアでは往復4万円を切るチケットが手に入る場合もあります。

ご飯や文化を楽しみたい、という目的がメインではありますが、中には「インフラが最高に整っている日本を一度見ておきたい」という真面目な人もいたりします。

 

さて、ここまでで

  • インドネシアで海外旅行を楽しむ人は増えていき、東南アジアで1位のアウトバウンド国になる日がくるかも
  • 現時点での日本旅行者は多くはないが、今後増えていく可能性はある

ということを見てきました。

最後にもう一つだけデータを見ます。

 

インドネシア人訪日観光客の増加は日本の観光産業を潤すのか?

もちろんお金がすべてではないですが、ビジネスとして捉えた場合はお金も大事。ここはシンプルに、「お金どれだけ落としてくれるの?」というデータを見て終わりたいと思います。

訪日外国人消費動向調査

「訪日外国人消費動向調査(観光庁、2016年)」より引用

観光庁調べの「外国人旅行客一人あたりいくら使ってくれたの?」というデータです。

まだ爆買いが収まる前なので中国人の買物代が飛びぬけていますね。桁が違います。

東南アジア勢はフィリピンの12.6万円からベトナムの19.4万円まで差があります。インドネシアは14.7万円とこれまた真ん中。

細かい上昇下降はあるでしょうが、東南アジアといえども台湾や香港などの東アジア勢と同じくらいお金を使う、ということは言えそうです。

インドネシア人の所得が伸びていくことを鑑みると、「そこまで圧倒的にお金を落とすことはないが極端に少ないということもない」というのが現時点での回答でしょう。

しかし韓国人はお金使わなすぎですね……逆にそこが気になってしまいました。

あとはイギリス人ホテル高すぎ、とかスペイン人交通費かけすぎ、など。面白いですね。

 

さて、長くなりましたが色々と調べて自分自身もだいぶ整理できました。

次は「日本旅行に行くインドネシア人の行動を考える」のように深堀していきたいのですが、疲れてしまったのでまた次回にします。

インドネシアへのプロモーションをお考えですか?

要件が固まる前の段階でもお気軽にご連絡ください。現地の知見を踏まえ、最適な方法を並走して一緒に考えさせていただきます。
Webコンサルティング

久しぶりのブログ更新となります。

最後の更新が2015年11月のインターンブログなので、実に9カ月ぶりとなってしまいました。

インドネシアに在住しているとインドネシアの中からの視点があり、外からは得られない情報もあります。

インプットの整理も含めて、もう少しこまめに情報発信をしていきます。

 

2016年下期での変更点

当社では主にインドネシアへの進出支援ということで調査や現地での事業運営サポートを行ってまいりました。

2016年も下期に入り、インドネシアへ関わり始めてから約2年の歳月が経過しました。

実は会社の体制も少々マイナーチェンジを行いました。

具体的な変更点をこの場を借りてお伝えします。

 

 

変更点①新メンバーの参画

Webコンサルティング

Webサービスの立ち上げや運営に精通した下田祐介が本年下期よりJAPASIANへ参画しました。

下田はイギリス、フィリピン、シンガポール、と主に英語圏を渡り歩きながら複数Webサービスの立ち上げや運営の経験を積んできました。

特にシンガポールではSkipforward Pte Ltdという会社を設立し、CEOに就任(現在も兼任)。

Skipforwardではクラウドタスク管理ツール「Jooto」を主に運営し、現在進行形でサービスの成長に邁進しています。

基本的には自社内や共同事業での新規事業開発を行う形となりますが、面白そうなお話があればお気軽にお声掛けください。

また、彼が心血注ぐ「Jooto」もご利用いただければ幸いです(基本利用は無料です!)。

 

 

変更点②訪日インバウンド支援

訪日インバウンド支援

インドネシアに2年在住して体感することの中に、「若年層を中心とした中間層の増加」があります。

ハレとケの性格が強いインドネシアマーケットでは抑えるところは残念なくらいお金を使いませんが、思わぬところで一気に消費することもあります。

そのうちの一つが旅行。

細かくはまた別に頁を割いてご紹介予定ですが、海外旅行者数も増加しており、さらに嬉しいことに日本の人気も再燃しています。

当社では実験的にJapan Halal Walkerという「ムスリム特化型の日本観光情報発信ページ」を運営してきましたが、投稿に対する反応も一定量あり、このノウハウを活かしてSNS上での情報発信を支援する「インドネシア向けFacebookページ情報発信ライトパック」を提供開始しました。

また、他にもFacebookたけに留まらない情報発信支援(主に現地ローカルデジタルエージェンシーとの協業による提供)、インバウンドニーズを探るグループインタビューなども提供可能な体制となっています。

インドネシアはタイ・ベトナム・マレーシア3国を足したよりも人口が多く、ASEAN随一の市場ポテンシャルがあります。

もし少しでも先を見て動いておきたい、という企業様がいらっしゃればこちらもお気軽にご相談いただければ幸いです。

インドネシアへのプロモーションをお考えですか?

要件が固まる前の段階でもお気軽にご連絡ください。現地の知見を踏まえ、最適な方法を並走して一緒に考えさせていただきます。

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