2023年に入って以降、訪日観光客数は増加の一途をたどっています。
ところで、日本から見ると「日本は旅行先として人気なんだな…」と感じるかもしれませんが、相手国から見た場合はどうでしょうか?
本記事では「インドネシア×訪日」という軸で、「インドネシア国内から見た場合の訪日旅行の位置づけ」を探ってみます。
【この記事でわかること】
- インドネシアからの訪日外客数
- インドネシアでの海外渡航先としての日本の位置づけ
- インドネシア人の訪日観光における課題
Contents
インドネシアからの訪日外客数はどれくらい?
JNTO発表の訪日外客統計によれば、2023年3月のインドネシアからの訪日数は33,200人となっています。
コロナ前の2019年3月の数値が39,609人でしたので、2019年を基準とした場合は概ね100%近くまで戻ってきたと言えるでしょう。
ちなみに2019年通年でのインドネシアからの訪日外客数は412,779人でした。
2019年を振り返ると、東南アジアでは唯一タイが年間100万人以上(1,318,977人)の訪日外客数を記録。
その後をシンガポール、マレーシア、インドネシア、マレーシア、フィリピン、ベトナムが約40~60万人の間で追っている、という構図でした。
2023年はまだ前半戦の最中であり、これから東南アジア各国がどのような動きを見せるかは注目すべき点です。
インドネシアの中で日本は旅行先として人気?
結論からお伝えすると現在のインドネシアにおいて日本は「人気旅行先」と言っても過言ではないでしょう。
首都であるジャカルタで生活していると、「今度日本に行く」という方に出会うことも珍しくはありません。
とはいえ、見聞きする情報だけでは客観性が低いのでいくつか参考情報を示します。
2016年時点で日本は海外渡航先として8位だった
こちらの表は過去にJNTOのデータを元に当社で作成した「インドネシアからの訪問先推移(2011-2016)」です。
2016年の時点で、インドネシアからのアウトバウンドランキングは以下の通りでした。
ランキング | 渡航先 | 渡航人数 |
1 | マレーシア | 3,049,964 |
2 | シンガポール | 2,893,646 |
3 | サウジアラビア | 941,138 |
4 | 中国 | N/A |
5 | タイ | N/A |
6 | 香港 | 362,735 |
7 | 韓国 | 295,461 |
8 | 日本 | 271,014 |
隣国のマレーシアとシンガポールが常に旅行先として人気。
その後はイスラム教の聖地メッカがあるサウジアラビアが続く。
その後をアジア・東南アジア勢が追う、という構図でした。
蛇足ですが、シンガポールやマレーシアが人気なのは「隣国で渡航費が安い」という理由もありますが、この手のデータには出稼ぎ関連の渡航数も多く含まれると言われています。
またサウジアラビアが常に上位に含まれるのは、「ハッジ」や「ウムラ」と呼ばれる、イスラム教徒が多数を占めるインドネシアならではの理由による渡航が発生するためです。
詳細は以下の記事でご覧ください。
2019年時点で日本は訪問先として7位
コロナ前の2019年の数値を見てみますしょう。
インドネシア統計局が発表したデータによれば、2019年通年でインドネシアからの海外渡航者は1169万人でした。
次のグラフは渡航先の内訳についてです。
パーセンテージ表記だと直感的にわかりにくいので、上記グラフを元と年間渡航者数を元に数字に直したのがこちらの表です。
ランキング | 渡航先 | 全体に占める割合 | 渡航人数 |
1 | マレーシア | 35.46% | 4,145,274 |
2 | シンガポール | 18.40% | 2,150,960 |
3 | サウジアラビア | 12.54% | 1,465,926 |
4 | 東ティモール | 4.92% | 575,148 |
5 | 中国 | 4.77% | 557,613 |
6 | タイ | 4.26% | 497,994 |
7 | 日本 | 3.31% | 386,939 |
8 | オーストラリア | 1.94% | 226,786 |
9 | 韓国 | 1.76% | 205,744 |
10 | 香港 | 1.60% | 187,040 |
マレーシア、シンガポール、そしてサウジアラビアの3強に変化はありませんが、4位以降に入れ替わりがあります。
日本は7位にまで上昇しています。
2019年の日本側の訪日外客把握数と多少 のずれはありますが、信ぴょう性のあるデータと判断して良いでしょう。
直近の渡航先ランキングは?
詳細な数値は公開されていませんが、GlobalDataのTravel & Tourism in Indonesia reportによれば、2022年のインドネシアからの渡航先ランキングは以下の通りです(参考記事の公開範囲を元に、当社にて表を作成)。
【参考記事】Top ten outbound destinations from Indonesia
ランキング | 渡航先 | 渡航者数 |
1 | サウジアラビア | 1,116,600 |
2 | マレーシア | 1,041,000 |
3 | シンガポール | 非公開 |
4 | タイ | 非公開 |
5 | トルコ | 非公開 |
6 | 日本 | 非公開 |
7 | アメリカ | 非公開 |
8 | オーストラリア | 非公開 |
9 | 韓国 | 非公開 |
10 | 中国 | 非公開 |
有料レポートなので一部の数値は公開されていませんが、日本は6位だったようです。
トルコが5位に食い込んでいるのは当時トルコリラ安があり、旅行先としてブームになったことが理由です。
さらに、最新の2023年3月のニュースでは、2月に行われた旅行博「ASTINDO Travel Fair 2023」にて「日本と西欧の需要が高かった」と報告されています。
【参考ページ】Indonesia outbound travel bookings continue to surge
訪日数増加の鍵はeパスポートの普及?
インドネシアは日本の制定する「ビザ免除措置」の対象国です。
【参考ページ】インドネシア国民に対するIC旅券事前登録制によるビザ免除(外務省)
具体的には、事前にインドネシア国内の管轄でIC旅券の登録を行えば、3年又は旅券の有効期間満了日まで「15日間の滞在」を何度でもできるようになる、というものです。
初回に手続きが必要なものの、一度手続きをすればその後は入国しやすくなります。
一方、インドネシアではまだeパスポートの普及がそこまで進んでおらず、この仕組みの対象者の数自体が多くはないという課題もあるでしょう。
蛇足ですが本記事を執筆している2023年5月時点では、インドネシア人がパスポートを作る際に通常パスポートとeパスポートの2択から選べます。
現在のインドネシアにおけるパスポート発行の公式料金は以下の通りです。
- 通常パスポート 350,000ルピア
- eパスポート 650,000ルピア
【参考ページ】:Cara Membuat Paspor Sehari Jadi, Siapkan Biaya Minimal Rp 1,35 juta
倍近く料金が変わると、通常パスポートを選んでしまう人も少なくはないかもしれません。
蛇足ですがさらに1,000,000ルピアを払うと、「即日発行」のサービスを受けられます。
エクスプレス料金が準備されているのはなんともインドネシアらしい部分です。
まとめ
こうしてデータを並べてみると、「日本はインドネシアにおいて旅行先として人気である」と客観的にも言うことができそうです。
インドネシアの人口は約2.7億人で世界第4位です。インドネシア中央統計局によれば2045年には約3.2億人にまで増えると予想されています。
現在はまだ限られた人しか海外を訪れることができませんが、今後経済成長していくにつれアウトバウンドの全体数もまだまだ伸びていくでしょう。
当社では訪日インバウンドプロモーションのサポートも行っています。今のうちに先手を打っておきたいという企業、自治体の皆様からのご相談をいつでもお待ちしています。